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台湾 日月譚
台湾最大の湖。湖の形が丸く太陽
のようなところ,三日月のような所
あってこのような名前となっている。
雲取山(東京,埼玉)
東京都の最高峰 標高2017m。
日本百名山。
大菩薩峠(山梨県)
標高1897mのこの峠を越え,大菩薩嶺(2057m,日本百名山)を目指す。
ポルトガル ロカ岬
ユーラシア大陸の最西端。「ここに
地終わり,海始まる」の碑が立つ。


No.4 地震

 安定地塊に住んでいたため地震を経験したことのない外国人が日本に住み,初めて地震を経験すると大変驚くということだそうだ。

地震が起こるから,地球内部の構造がこのようになっているのだと推測される。
 4 地震

 かつて,子ども(とは限らない)にとって怖いものと言えば「地震・雷・火事・親父」だったのです。現在では,

父権の脆弱化から,「怖いものベスト4」の言葉はリアリティーをもって通用することはないでしょう。

 しかし筆頭の地震は,雷,火事,親父と違ってその脅威から逃れられません。日本は変動帯にあって,

世界でも有数の地震の多発地帯になっています。

 一方,北米,南米,ユーラシア,オーストラリアそれぞれ大陸中心付近の安定帯に住む人たちは「地震」

を経験したことがない人が多いのです。私たち日本人では全く考えられないことです。そして記憶に新しい

ことですが,2004年10月の中越地震では46人の方が,1995年兵庫県南部地震では6000人を超える方が亡

くなっています。国は地震を予知し,被害を最小限にとどめようとしています。地震について学びましょう。

 地震は地殻,またはマントルでの破壊がその原因とされています。地下の深部において,地殻,またはマ

ントルがなんらかの力を受けて破壊され,その衝撃が同心円状(球面状)に伝わったものです。そのとき,

「体積の変化が伝わる」P波と,「物質のねじれが伝わる」S波,表面波が震源を一斉にスタートします。P波の

速度は5~7km/秒,S波のそれは3~4km/秒ですから,様々な観測所にはP波の方が先に届き,S波は後か

ら届くことになります。(P波=Primary wave,S波=Secondary wave)


1 大森公式

 このようなP波,S波の速度の違いから,大森房吉は震源までの距離を概算で求める公式を提案しました。

P波がある観測地点に到着してから,S波が到着するまでの時間を「初期微動継続時間(T)」と言います。あ

まりにも長い名称なので,「S-P時」と言い換える時もあります。

 「S波が到着した時刻」-「P波が到着した時刻」=「初期微動継続時間」





図 1で考えましょう。

距離Dを伝わるP波の所要時間は D/Vp (秒)。同様に,S波のそれは D/Vs(秒)。

S波の速度はP波より小さい(遅い)のですから, D/Vs(秒) > D/Vp (秒)

 S波の,P波に遅れをとる時間は D/Vs(秒) - D/Vp (秒)。 これは,初期微動継

続時間(T)に等しいことになります。従って T=D/Vs - D/Vp この式について,D=の

式に変形しましょう。大森公式が導かれます。

分母を通分して,

T=D・Vp/Vp・Vs -D・Vs/Vp・Vs

T=D・(Vp-Vs)/Vp・Vs

T・Vp・Vs=D・(Vp-Vs)

∴D=Vp・Vs・T/(Vp-Vs)

 大森公式


     大森公式の覚え方




 Vp=5~7km/秒 ,Vs=3~4km/秒ですから,「台形」でくくった部分は,

値に幅のある定数となります。

 かりに,Vp=5km/秒 ,Vs=3km/秒とすると,「台形」の部分は

7.5km/秒となります。

 カタカタ・・・と揺れを感じ地震かなと思ったらすぐ,ユサユサユサ・・・・の

揺れが来るまで何秒か計り(初期微動継続時間(T)),それに7.5を掛け

ます。観測者から何kmのところで地震が発生したか,およその距離を求め

ることができます。


2 走時曲線

 地震が発生し,震源を「走」り出した地震波が観測地点に到着するまでの

「時」間を「走時」と言います。「震源から観測地点まで走るのに要する時間」

と理解しても良いでしょう。

 縦軸に走時,横軸に震央距離をとって表したグラフを「走時曲線」といいま

す。グラフの様子が途中で折れ曲がったり,曲線なったりするので「走時曲

線」と呼ばれます。

 およそ震央距離1000kmを越える地震を「遠地地震」,それよりも近いところ

で発生した地震は「近地地震」といいいます。

 おおざっぱに言うなら,「遠地地震」は地球の裏側で発生した巨大地震,

「近地地震」は日本列島のどこかで発生した地震,と言う分類になります。

それでは,近地地震,遠地地震の走時曲線を調べることによって何が分か

ったのでしょう。

 ①「近地地震」の走時曲線から

 地球の内部はジャガイモのように均質ではなく,「地殻」,「マントル」の2

層構造になっているらしい。








②「遠地地震」の走時曲線から


 

 
マントルの内側には液体の「外核」,外核のさらに内側には固体の「内核」があるらしいこと



3  近地地震の走時曲線

  モホロビチッチ(Mohorovicic 1857-1936)は,多くの近地地震の走時曲線を調べていたとき,

震央距離200km付近で,グラフが折れ曲がることに気づきました。




  図4では,震央距離240kmで折れ曲がっています。折れ曲がった地点を「屈折点」, 震央

からのここまでの距離を 「屈折点距離 L 」 で表します。

 さて,ここで,グラフの傾きは何を意味するのでしょう?横軸は地震波の進んだ距離,縦軸は

その距離を進むのに要した時間ですから,グラフの傾きは 時間÷距離(みちのり) になりま

す。ここで,中学校の理科で習った「み・は(そ)・じ」の公式を思い出してください。グラフの傾き

は,時間/距離=1/速度であることが分かります。






 
したがって,グラフの傾きが途中で変化したということは,地震波の速度が変化したことを意

味します。それでは①折れ曲がる前と,②折れ曲がった後の地震波の速度を求めて見ましょう。



 



①「折れ曲がる前」の地震波の速度

図5の三角形(v1)に注目します。進んだ距離は240km,所要時間は40秒と読めます。したがって

「み・は(そ)・じ」の公式から

「折れ曲がる前」の地震波の速度をv1とすると

v1= 240km÷40秒=6km/秒,同様に

②「折れ曲がった後」の地震波の速度

図5の三角形(v2)に注目します。進んだ距離は(400-240)km,所要時間は(60-40)秒と読めます。

したがって 「折れ曲がった後」の地震波の速度をv2とすると

v2=(400-240)km÷(60-40)秒=160km÷20秒=8km/秒

 走時曲線が折れ曲がってから,は8km/秒に地震波の速度が大きく(速く)なっていることが分

かりました。 このようになる訳をモホロビチッチは次のように考えました。

 「地下に地震波を速く伝える部分があると仮定すると,説明がつく。」

 図7を見ながら考えましょう。地震が発生して10秒後,地殻だけを通った直接波はA地点に

到達しますが,マントルを通った屈折波はA地点には到達していません。

 20秒後。B地点には直接波と地殻とマントルを通った屈折波が同時に到達しました。30秒

後では,C地点に屈折波の方が直接波より早く到達しています。「速度の速くなった地震波」が

C地点に到達したわけです。

 B地点は直接波と屈折波が同時に到達した地点で,これより以遠では直接波より屈折波の

方が先に到達することになります。その結果,走時曲線は折れ曲がることになります。

 




 イメージとしてはこのようなことを考えると良いでしょう。

 地下鉄のある都市で,図7の「震源」から「A地点」まで行くとき,徒歩で行った方が早く

着くでしょう(A地点の直接波)。地下鉄駅までおりて行き,地下鉄に乗り,また地下鉄の

駅から地上に上がるルートは時間がかかります。(A地点の屈折波)

 しかし,ある程度の距離にある「C地点」まで行くときには,徒歩で行くより(C地点の直

接波),地下鉄に乗っていった方が早く着くでしょう。(C地点の屈折波)

 このようなことから近地地震の走時曲線は,あるところで折れ曲がることになります。また,

地殻が厚いところ(地殻の厚さ=d)では,「地下鉄の駅まで降りたり,地上に上がったりする

のに余計に時間がかかる」ことになります。そのため,直接波に追いつき・追い越すには長

い距離(屈折点距離=L)が必要になります。

 つまり d ∝ L 地殻の厚いところでは屈折点距離が大きくなります。

                    

 このようにして,地震波を遅く伝える上の層を「地殻」,地震波を速く伝える下の層を「マン

トル」,両者の間の不連続面は,発見者の名にちなんで「モホロビチッチ不連続面」(モホ

面)と名付けられました。
              


4 遠地地震の走時曲線

 巨大地震が発生すると,地球の反対側でも地震波を観測することができます。そのため,

遠地地震の走時曲線は縦軸の走時は「分」単位,横軸の震央距離はkmではなく,「角距

離」を用います。km単位にすると,極めて横に長ったらしいグラフになって,グラフの特徴を読

み取ることができなくなるからです。





           



 上の図は日本海中部地震(1983年)の走時曲線です。(一部モディファイ)この図を

良く検討してみましょう。

 まず気がつくのは巨大地震が発生しても,P波もS波も届かない地帯があることに気

づきます。P波はΔ=143度以遠には到達していますが,Δ=0~103度までのグラフの傾

向から大きく時間がかかっていることが分かります。S波は, Δ=103度以遠には到達

しません。

 P波もS波の走時曲線は,震央角距離が大きくなるにつれ,傾きが緩やかになって

います。 

 まず,P波もS波も届かない地帯があることについて考えましょう。

 S波の性質を思い出してください。忘れた人は「地震」単元の冒頭を見てください。

S波は「物質のねじれが伝わる」のでした。物質をねじるとき,ねじる手応えがなければ

物質は「ねじられた」と思わないでしょう。

 「固体」をねじるとき時は手応えがあります。しかし,「液体」,「気体」をねじろうとしても

流動性があって,ねじる手応えが無いですね。つまり,「液体」,「気体」はねじることがで

きません。

 「液体」,「気体」を地震波のS波は伝わりません。震央角距離が大きくなるほど地震

波はより地球の深いところを通過することになります。 「S波が Δ=103度以遠には到達し

ない」ということは,震央角距離 Δ=103度 の地点に至る際の,S波が通過するもっとも深

い所より,更に深いところは「液体」か「気体」になっていることを意味しています。地球の

深部が「気体」ということはないでしょうから,何か物質が「ドロドロ融けた」状態になってい

る-と言うことが考えられます。


  
 
 では,P波は液体を伝わるのに,Δ=103~143度の間の観測地点に到達しません。この

訳はどう説明されるのでしょう。

 前に,「P波は,Δ=143度以遠には到達していますが,Δ=0~103度までのグラフの傾向

から大きく時間がかかっていることが分かります。」と述べました。このことは,図10のS波

をとおさない「灰色」の部分をP波が通過する時,スピードが小さくなっていることを意味し

ます。黄緑色の所では速かったのが,灰色部分の所ではP波が伝わりにくくなり,遅くなっ

ているとと言うことです。

 プールサイドから見ると,プールの底が浅く見えることがあります。光が屈折するためです

。このような屈折が地球の内部で起こったため,P波が到達しない「地震波の影の地帯

(shadow zone)」ができるのではないかと考えます。屈折が起こる訳を説明しましょう。



             

 P波を自動車と考えます。黄緑の部分は「舗装道路」,灰色の部分は「どろんこ道」,「舗装

道路」と「どろんこ道」の境界面に対して斜めに自動車が進行してきました。

 右の前輪が左の前輪より先に「どろんこ道」に入ります。右の前輪は「どろんこ道」なので

進みません。

 一方,左の前輪はまだ「舗装道路」を走ってますから,進みます。

 つまり自動車が境界面を通過する際,右側の前輪だけにブレーキがかかった状態になり,

その結果ハンドルを右に切った状態と同じになります。図12の点線のようには進まないで,

実線のように屈折することになります。

 「どろんこ道」から「舗装道路」に斜めに進行するときも同様に,屈折が起こることになり

ます。

 また,「どろんこ道」から「舗装道路」,「舗装道路」から「どろんこ道」へ境界面に対して垂直

に進行するときは,左右の前輪は同時に「舗装道路」または「どろんこ道」に進入しますから,

屈折は起こらないことになります。

 このようなことから,マントルのさらに内側には液体の核(外核)があるらしいことが分かりま

した。そして,遠地地震の走時曲線を詳しく検討したところ,Δ=103~143度の間の観測地点に

も弱いP波が到達していたことが分かりました。液体の外核のさらに内側に固体の内核があ

り,その表面で反射したためと考えられました。

 このようにして物質の違いによって,地球は次の4つに区分されました。内部構造,境界面

(不連続面)の名称と地表面からのおよその深さを押さえましょう。









別項 「東北地方太平洋沖地震」

①東北地方太平洋沖地震の概要

 
2011年3月11日14時46分、宮城県沖東約50km、深さ約17kmの地点でマグニチュード(M)9.0、最大

震度7の東北地方太平洋沖地震が発生した。M9.0の地震は気象庁観測史上最大の地震であり、私たち

は激しく長い揺れを身をもって経験した。

 この地震によって大津波(「津」は港を意味し、津波は港に押し寄せる大波の意。Tsumamiはアメリカで

もフランスでも通用する学術用語)が発生し、東京電力福島第一原子力発電所ほか、港湾、道路、橋梁、

鉄道、建物、家屋が破壊され沢山の方が亡くなられ、未だに行方不明の方も多数(岩手、宮城、福島県の

死者行方不明者数は19902人、2011年9月9日現在警察庁発表)いらっしゃいます。

 心から亡くなられた方々のご冥福をお祈りいたします。

 
この地震と津波によってもたらされた災害を「東日本大震災」と呼んでいる。




 
②大津波とはどれだけのものか?
 
:宮城県牡鹿郡女川町鷲神浜。家の二階まで津波によって瓦礫が運ばれてきている。

 最大波高が40mを越えるものであったという。特に岩手県南部のリアス式海岸では、湾奥が狭くなって

おり海水が集中するため波高が高くなりやすい。40mの高さとは、街中のビルで考えれば理解しやすい。

ビル一階あたりの高さは3mほどだから、13建てビルの高さの大波が押し寄せたこととなる。

 津波(長波)の押し寄せる速さV(m/秒)は、重力加速度をg(m/秒2)、水深をh(m)とすると、V=√ghで表さ

れる。大雑把な計算として、g=10(m/秒2)、h=20(m)(陸地に近いので水深は浅く、h=20mとして)とすると、

V=√200?14 m/秒。時速では約50kmとなり、 13建てビルほどの波が 時速約50kmで押し寄せることになる。

大人でも、低いところから高台へと徒歩や自転車で逃げることは殆ど不可能なこと。また、V=√ghの式から

分かるように、沖では水深が深くhが大きくなるので、津波の速さは更に速くなることになる。



 
③東北地方太平洋沖地震の予知は可能だったか

 
近年において宮城県沖地震は1978年6月に発生(M=7.4)し、死者28人、建物の全壊が1000棟余りの被

害を発生させた。同一震源地域においておよそ37年ごとに大地震が発生している。
 



宮城県牡鹿郡女川町女川浜。横倒しになったビル。赤い自動車もそのまま横倒しになっている。(おことわり:写真はYahoo東日本大震災写真

保存プロジェクトによるものです。
http://archive.shinsai.yahoo.co.jp/ 

 政府の地震調査委員会は2020年までに地震が発生する確率は81%、2030年末だと98%。地震の規

模はM=7.5前後とし、別の震源域との連動の場合はM=8となる危険性を指摘していた。しかし、これ

は地震発生の確率であり「予知」とはいえない。2011.3.11は、1978年の宮城県沖地震以来から大

地震発生のインターバル37年からして2015年、4年先んずるが地震発生のインターバルに含まれる

といえよう。

 マグニチュードをM、地震の発生エネルギーE(J)とすると、E(J)は、log
10E=1.5M+4.8と表される。

従って、Mが1大きくなると地震発生エネルギーは10√10倍?32倍大きくなる。今回のM=9.0の地震は

先の地震調査委員会の見積もった地震の規模はM=7.5前後の 地震のエネルギーの180倍以上のエ

ネルギーを放出した地震だった。

 地質学・地震学者はこれまでもそうだったように、そして3.11以降も精力的に研究を進めてきている。

日本地質学会は2011年5月11日、「過去の研究(貞観地震(869年宮城県沖発生)による津波堆積物

研究)の成果を(今回の地震による)防災・減災に生かすことができなかったことに痛恨の極みである」と

会議報告したという。(この項は一部、2012年5月Vol.118No.5地質学雑誌、ジオルジュMAY2012.5.10を

参照しました。



【各地の震度に関する情報】
気象庁HP。http://www.jma.go.jp/jp/quake/
No.4 地震の説明に係る(受験に出る!)英単語



国立科学博物館展示品
大森式地震計



大森房吉が1898年頃完成させた

大型地震計。震動を感知してか

ら作動する方式から、常時観測し

て連続記録できる地震計。振り

子の周期は10秒以上、記録の

倍率は20倍前後である。日本の

代表的地震計で、国内外で数多

く使用された。

earthquake :地震、experience(undergo):経験、structure:構造、speculate:推測する、thunder:雷、

fear,terror:恐ろしい、mobile belt :変動帯、foresee:予見する、cause:原因、impact:衝撃、

volume:体積「、velocity:速度、observe:観測する、observation:観測、observatory:観測所、

fomula:法式、公式、distance:距離、道程、constant:定数、定量、homogeneous:均質な、

subway,tube:地下鉄、inclination:傾き、勾配、state :状態、inner:内部の、inner structure

内部構造、surface:地表、表面、discriminate:区分、弁別、識別する、depth:深さ、深度、

magnitude:大きさ、規模、マグニチュード、destroy:破壊する、comprehend:理解する

 






 
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