No.11 大陸の移動と海底拡大

1 ウェゲナーの大陸漂移(移動=continental drift)説


 後に説明されるplate tectonics =プレートテクトニクスの先駆けとなった考えが、ウェゲナーの大陸漂移(移動)説になります。


 

 

 

アルフレッド・ウェゲナー(Alfred Lothar Wegwner、1880-1930、ドイツ )

(NHK地球大紀行 3 昭和62年6月5日 より 一部借用)



 この人は地質学者ではありませんでしたがある日、世界地図を眺めていた彼はアフリカ大陸(西岸)と南米大陸(東岸)の海岸線の凹凸が平行的であることに気づき、両大陸はかつて一つの巨大な大陸(パンゲア、パン=全ての、ゲア=大陸)として存在していたものが、長い地質学的時間の経過と共に移動したのではないか(大陸漂移・大陸移動 continental drift)と考え、地質学・古生物学・地質構造学など独学で学んだ上、学会で発表しました(1913)。


 彼はその後「大陸と海洋の起源」(1923)という著作物にまとめています。なお、岩波文庫から同名の文庫本が出版されています。


 ウェゲナーの主張は3億年前(石炭紀後期)現在の陸地は一つにまとまっていたこと。これをパンゲア(パン=全ての,ゲア=土地・陸地)と呼んで、南半分をゴンドワナ大陸、北半分をローラシア大陸、そしてその間にある海をテーチス海(古地中海)と呼びました。

彼はパンゲアの存在の証拠として、

 南北米大陸とアフリカ大陸海岸線の地形的な平行性、

 類似した陸生植物(現在)、化石・古生物の分布が両大陸を繋げたときつながること

 両大陸を繋げたとき,氷河の流れた方向が一致すること、

 かつての地質時代に形成された石炭や岩塩の分布がつながること、

 先カンブリア時代,及び古生代の地層と地質構造が一致すること、などを上げていいます。
 
  ウェゲナーの主張の弱点は、大陸移動の原動力が何なのか十分説明できないところにありました。

彼は大陸移動の原動力に

           

 月・太陽の引力、
            

地球自転による遠心力、
           

 創成時、高温だった地球が次第に冷却するにつれて収縮し、収縮に伴う大陸の移動と考えました。

 しかし、以上のような大陸移動の原動力の説明では、多くの地質学者を納得させることは出来ませんでした。
 
  1930年,彼は四回目のグリーンランドに調査に出かけたまま消息を絶ちました。それから20年後になって、大陸の相対的な移動あったことが分かってきたのです。




※上の図の引用文献の説明で、「変成岩と変成帯」が正しいです。

 Wilson(1963)の論文で、中生代中期の状況と書いています。南米大陸とアフリカ大陸がうまくくっついいている様子が見えます。また、南米大陸の下には南極大陸が、オーストラリア大陸も南極大陸にくっついいてますね。アフリカ大陸とオーストラリア大陸に挟まれた三角形の大陸がインド(島)。これが移動していってアジア大陸に衝突してヒマラヤ山脈を形成したというわけです。紅海もまだ閉じた状態です。日本列島は問題外のような扱われ方ですね。

2 極移動 


 地球は大きな磁石となっていることは前に学習しました(2 地磁気)。

 それゆえ、過去の地質時代(14 地質年代と化石・古生物)の地磁気は「残留磁気」として岩石に記録・保存されます。
 (「堆積残留磁気」=堆積岩であれば鉄鉱物が堆積時に当時の地磁気の向きを、

  「熱残留磁気」=火成岩であればマグマが冷却し鉄鉱物が形成される過程で当時の地磁気の向きをそれぞれ記録します。)


  これを調べることによって、過去の地質時代の極の位置が求められ、時代と共に極が移動することが分かりました(これを=極移動)。


  図は二つの大陸での極移動が示されています。いかなる時代でも、北磁極(南磁極)は1つであったはずで、そうなるためには、二つの大陸は過去の地質時代から現在にかけて移動が行われてきたと考えざるを得ません。

 このようにしてウェゲナーの死から、20年後の1950年代になって大陸移動説が復活することとなりました。

大正~昭和始めの地球物理学者 寺田寅彦 「神話と地球物理」 


「出雲風土記」を引用し陸地を動かしたとの話を紹介し、ウェーゲナーの大陸移動説に及び神話は単に「神仙譚」ばかりではなく、ある事実の萌芽を含むものかもしれないとしています。(昭和8年8月「文学」ワイド版 岩波文庫 寺田寅彦随筆集 小宮豊隆編 岩波書店)

 ところで風土記(古風土記)は、713年、国によって編纂を命じられた言わば地方の特産物・伝承記録誌で、現存するのは五つで完全な形で残っているのは「出雲風土記」。
(2014 宗教と現代がわかる本 責任編集 渡邊直樹 平凡社 2014年)

 一方、古事記(成立712年)、日本書紀(成立720年)は中央政府で編纂された天皇家・日本の歴史の「公式記録書」といえます。

 ウェゲナーは1913年に大陸移動説を発表し、そのわずか20年後の(昭和8年)に寺田寅彦は大陸移動説に言及しています。まだ不確かですが、当時の大学では地向斜-造山論の講義が行われていたと思われます。



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