低気圧は①熱帯低気圧と、②温帯低気圧に分類されます。
緯度5°～20°の洋上で、夏から秋にかけて発生します。寒気のない熱帯洋上に発生するため前線は伴いません。
北西太平洋上で発生した熱帯低気圧のうち、最大風速が17.2m/秒以上のものを「台風」と呼びます。「台風（タイフーン）」、「ハリケーン」、「サイクロン」、「ウイリウイリス」も同じ熱帯低気圧で、発生する地域で呼び方が違うだけで、「中身」、「本体」は同じです。
図－１
「最大風速が17.2m/秒以上」と半端な数字となっているのは、風速が「時速34海里」を秒速に換算したため。（1海里＝1852mで、計算しても17.2m/秒にはなりません。）
夏季、北西太平洋は太陽高度が高く、海面は高温となり水蒸気を多量に含んで上昇気流が発生します。
地球自転による転向力を受け、左回り（反時計回り）の渦を形成し、熱帯低気圧が発生。水蒸気は、上昇に伴って雲（水蒸気→液体＝水滴）へ変化します。この過程で周囲に潜熱を放出するため、上昇気流はますます強くなり、熱帯低気圧は発達することになります。（図－２）
図－２
図－２の熱化学方程式は1gの液体の水が1g の水蒸気（湯気ではない（湯気＝水滴））に「変身」するには583calの熱量（気化熱）を必要とする－ということ。「ただ＝エネルギーゼロで」で水蒸気になるのではない－ということです。
たとえば、鍋に水を入れてお湯を沸かそうとする。煮立ってから気がつきますが、沸かす前より鍋の中の水（お湯）が少なくなっています。これは、水1gにつき583calの熱量を得て、水蒸気に変身し「トンズラ」したためです。
また小学生の頃、夏の夕方、親に庭や家の周りに水を撒く（「打ち水」）よう言いつけられた人もいるでしょう（図－３）。（今ではエアコンがあってそんなことはなくなってきているでしょう・・。）
冷たい水（自家水道＝井戸水の水温は一年を通してほぼ一定で12～15℃程度）を撒くから涼しくなることもありますが、撒かれた水が蒸発することによって、庭や家の周りから気化熱（水1gにつき583calの熱量）が奪われることから涼しくなることを期待して行われたものです。
昔の人は、1g水の蒸発に583calの熱量が必要だなんて、そんなことは知らなかったはず。しかし、生活の経験から得た知恵として、「打ち水」は受けつがれて来たのでしょう。すごいですね。
図－３
一方、1g の水蒸気が1gの液体の水に戻るとき、これまた水蒸気は、律儀に借りていたお金を（583calの熱量）返す（凝結熱）んです。水蒸気が上空で雲（水滴・氷）になるときに、凝結熱を放出し、上昇気流は加速することになります。
そして「最大風速が17.2m/秒以上」となったとき、気象庁は「台風○号が発生しました。」と発表することになります。
台風は北東貿易風で西に向かいますが、北緯20度～30度付近を越えてからは偏西風の影響を受けて東寄りに進路を転換します。（台風の進行方向が変わるところを「転向点」）
年間の台風の接近数（1981年～2010年、H25年理科年表（国立天文台編）による）は、北海道=1.8個に対し、沖縄＝7.4個とのことです。
温帯低気圧の一生（図－４）を参照。
①寒気と暖気の接触
「北の冷たい高気圧」と「南の暖かい高気圧」から吹き出す寒気、暖気が接触して前線が発生します。この状態では寒気、暖気ともすれ違うだけで停滞前線の状態にあります。
②幼年期
勢力が強まり、停滞前線のあるところで寒気が南下、あるいは暖気が北上すると停滞前線に波動が生じて（「とんがり山」が出来て）、寒冷前線・温暖前線が生じるようになります。（停滞前線の）「とんがり山」の位置に温帯低気圧が発生することとなります。
③青年期
低気圧が発生すると、低気圧の中心に向かって寒気や暖気が流れ込み、寒冷前線面・温暖前線面では上昇気流が発達するとともに雨雲が形成されて降雨をもたらします。
④壮年期
寒気の南下速度は速く、寒冷前線は温暖前線に追いついてやがて閉塞前線が形成されるようになります。低気圧の中心では寒気と暖気が混じり合います。
⑤老年期～⑥消滅期
寒気と暖気が混じり合うことによって「前線」そのものが消滅し、低気圧の一生が終わり、低気圧は消滅します。
温帯低気圧は日本付近で発達、雨風をもたらし、カムチャッカ、ベーリング海で消滅します。
Bjerkness（ビヤークネス 1897～1975）ノルウエーの気象学者
図－４
潜熱輸送
図－２で示されるような状態変化《水（液体）→水蒸気（気体）、水蒸気→水）に伴う熱の出入りを潜熱輸送といいます。
顕熱輸送
一方、「伝導」、「対流」、「放射」による熱の移動を顕熱輸送といいます。
放射
放射は、既習（「No.17 太陽からのエネルギー供給、熱収支」）事項で、「エネルギー（熱）が電磁波で運搬される」ことでした。太陽の表面温度は約6000℃。この程度の温度の物体から発せられる電磁波は、人間の目に見える「黄」～「淡黄色」の可視光線が強く放射されます。
物体の表面温度が低くなるにつれ、「黄」色から次第に「オレンジ」色を帯びてきて、約3300℃では「赤」色を放つようになります。
我々の体の表面温度は32～34℃（手のひら、顔、脇の下など体の部位によって異なる）で、可視光線こそ放射していませんが、赤外線を放射しています（よくTVに人体のサーモグラフが出ます）。
ハブ、マムシが人を襲うのは、赤外線を感知する能力を彼らが持っているからです。
《物体の表面から最も強く放射される電磁波の波長（λm（ﾗﾑﾀﾞｴﾑ））と、物体の表面温度（絶対温度（T））には、λm・T＝C（一定）の関係があります。（ウィーンの変位則）簡単に言えば、望遠鏡で星の色を調べれば、その星のおよその表面温度が推定出来きます。恒星の世界に再出。》
対流
「暖められた流体（水、空気）が移動することにより、エネルギー（熱）が運搬される」こと。
ひとみちゃんは、石油ストーブで暖を採っています。暖まった空気が部屋を循環することによって、部屋が暖まっていきますね。なお、ひとみちゃんはコタツに当たっていますが、ひとみちゃんはコタツの「電熱器」からの放射と、「電熱器」によるコタツ内の暖まった空気の対流、放射・対流によって暖められた「コタツ掛け」からの「伝導」に暖められていることになります。
そこで、寒い冬でも「アイス、食べたいな－」って、なるのかも。
図－５
伝導
伝言ゲーム・地震の揺れが伝わるようなイメージで、「温度の高い方から低い方へエネルギー（熱）が運搬される」こと。「放し手」と「受け手」の間には、 放射のように「電磁波」も、 対流のように「流体」も介在しません。
「No.５ 地殻熱流量」で既習のように、地球中心の温度はおよそ6000℃と見積もられています。地球の内核は鉄の固体→伝導で、地球の外核は鉄の液体→対流で、マントルのアセノスフェアは流動性があり→対流で、リソスフェアは固体→伝導で、地球表面から→放射 というように複雑な過程を経て、地球内部からエネルギーが運搬されて来ています。
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