2018年 センター試験 地学
以下にセンター試験の問題解説を行います。HP上の問題文は実際の問題の「空白を圧縮」するなど改変しています。実物に近い 問題は大学 受験学習塾、大学受験模試を行っている各社のHPから手に入れるなりしてください。なお、問題文は黒色で、解説・ 考え方は青色で示しました。
第 1 問~第 4 問は必答、第 5 問、第 6 問から1問選択
第 1 間 (必答間題)
地球に関する次の問い(A~D)に答えよ。[解答番号 1 ~ 8] (配点 27)
A 地球の内部構造に関する次の問い(間1・間2)に答えよ。
間1 次の文章中の ア・ イ に入れる語の組合せとして最も適当なものを,下の①~⑥のうちから一 つ選べ。 解答番号 1
地球の地殼とマントル, 核の中で, 体積が最も大きな層は ア である。また,平均的な密度が最も大きな層は イ である。
問2 地震波のP波やS波について述べた文として最も適当なものを, 次の①~~④のうちから一つ選べ。解答番号 2
① 地球内部のある領域では, P波の速度はS波の速度より遅い。
② 縦波であるP波は,波の進む方向に対して平行に振動する。
③ 横波であるS波は,液体中は伝わらないが,気体中は伝わる。
④ 横波であるS波は,地表面を水平方向にのみ振動させる。
B 地震とプレートに関する次の問い(間3・間4)に答えよ。
間3 下の図a・bは震源の深さの異なる地震の震央分布をそれぞれ示したものである。 次の文章中のウ~エに入れる語と記号の組合せとし て最も適当なものを,下の①~④のうちから一つ選べ。解答番号 3
プレートの沈み込みにより深さ 100kmより深いところでも地震が発生し, そのような地震は深発地震と呼ばれる。 深発地震の震源は面状 に分布し,
これをウという。 また, 深発地震の震央分布を示した図はエである。
問4 次の図1は地磁気逆転の歴史の模式図を,図2は海嶺軸に直交する方向に沿って測定した海底の磁気異常を示している。 この海嶺付近での プレートの平均的な移動速度は約何cm/年か。 その数値として最も適当なものを, 下の①~④のうちから一つ選べ。 解答番号 4 cm/年
① 3 ② 4 ③ 8 ④ 13
C 地球の形状とアイソスタシーに関する次の問い(間5・間6)に答えよ。
間5 地球の形状について述べた次の文中のオ・カに入れる語と数値の組合せとして最も適当なものを, 下の①~~④のうちから一つ選べ。解答番号 5
地球楕円体はオの形に最も近い回転楕円体として定義される。地球楕円体に対するオ の凹凸(起伏)は最大で約カ kmである。
問6 次の図3は,氷期と現在における,ある地域の断面を模式的に表している。氷期と比べると, 現在では, 地表を覆っていた氷床がとけて地殼の 上面が470 m隆起している。 現在と氷期でいずれもアイソスタシーが成立しているとすると, 氷期に地表を覆っていた氷床の厚さは何か。 最 も適当な数値を,下の①~④のうちから一つ選べ。ただし, この地域のマントル,地殼,氷床の密度と地殻の厚さは図3の通りである。解答番号 6
(氷期の「氷」の文字が文字化けしています)
① 940 ② 1400 ③ 1700 ④ 2800
D 上部マントルとマグマの生成に関する次の文章を読み, 下の問い(間7・間8)に答えよ。
上部マントルは主としてかんらん石と キ からなる岩石で構成される。プレートが沈み込む境界では, 冷たい海洋プレートが高温のマントル の中に沈み込んでいく。 海洋プレートに含まれる鉱物の一部は, 沈み込みに伴う温度と圧力の上昇により分解し,
ク が放出される。 これが マントルに加わって融点が下がり, マントルの溶融が起きると, 玄武岩質マグマが生成される。
間7 上の文章中の キ ・ ク に入れる語の組合せとして最も適当なものを,次の①~④のうちから一つ選べ。解答番号 7
間 8 上の文章中の下線部に関連して, 玄武岩質マグマについて述べた文として最も適当なものを, 次の①~④のうちから一つ選べ 。 解答番号 8
① 流紋岩質マグマに比べて, 噴出時の粘性が高い。
② 玄武岩質マグマが固結してできた岩石は, 花こう岩質の岩石よりも放射性同位体の崩壊による発熱量が大きい。
③ ホットスポットでは,大陸地殼が部分溶融して玄武岩質マグマが生成される。
④ 中央海嶺では, 高温のマントル物質が圧力低下によって部分溶融して,玄武岩質マグマが生成される。
【第 1 問 解説・解答】
解答番号 1 参照HP No.3
アの地殻は、ゆで卵の殻のような厚みですから、体積としては大きくはないだろう−となります。次にマントル、核の体積の大小 関係ですが、地球の断面図で核とマントルの境が大体地球の半径の半分くらいであった−と記憶にあれば、大雑把に計算できます。
マントルの体積=地球の体積-核の体積。体積Vは、半径rとすると、V=4/3・π・r3 半径の3乗に比例します。4/3・πは定数で すから、マントルの体積=13-(1/2)3=7/8=87%ほどとなります。(cf HP No.3.)∴ア=マントル
イは、地球の成り立ち=部分的に溶融して地球の中心に密度の大きい鉄・ニッケルが、その外側には密度小さいマントル物質が層 状に分化したこと-が分かっていれば、「核」と決まります。
解答番号 1 の答え ④
解答番号 2 参照HP No.4
① 地球内部のある領域では, P波の速度はS波の速度より遅い。→ P波の速度は5~7km/秒、 S波の速度は3~4km/秒でP波の速 度が速い。
② 縦波であるP波は,波の進む方向に対して平行に振動する。 → 正しい
③ 横波であるS波は,液体中は伝わらないが,気体中は伝わる。→ S波は 横波で、「物質のねじれ」が伝わる。従って、液体も気体 も「ねじれ」を生じないので、S波は液体中も気体中も伝播しない。 → 誤り
④ 横波であるS波は,地表面を水平方向にのみ振動させる。地表は固体。「ねじれ」は水平方向に限らない。→ 誤り
解答番号 2 の答え ②
解答番号 3参照HP No.12 図「大陸・縁海・島弧・海溝・海嶺系と変成作用、マグマ発生の関係」
地溝帯は文字通り大地が溝のようにくぼんだところ、もしくは中央海嶺の「ギャオ(ギャウ)」になります。問題説明文では「 深 発地震発生」箇所に触れていて、地溝帯、「ギャオ」はプレートが生産され浅発地震の発生している所ですので該当しません 。→ ウは「和達-ベニオフ面」
深発地震の震源分布図が図a,図bどちらが正しいか?と聞いてきますが、図aには中央海嶺に沿って発生する浅発地震の震央が示 されています。→エは図b
解答番号 3 の答え ④
解答番号 4 参照HP No.12 「ホットスポット、プレートの移動速度の求め方」
問題文図1には地磁気の逆転と年代は示されていますが、「距離のスケールが示されていません」。そこで安易に80万年前まで 正の異常。図2で正の異常の記録された海底拡大距離を25kmと読み取ります。V=25×105cm÷8×105年=3.12cm/年→答え① とやってしまった人が多いのではないでしょうか?
落ち着いて図2をよく見ると「100kmで負の異常になった」と示してあります。それは今から何年前か?図1に戻れば260万年前 ということが分かります。(出題者、なかなかうまい手で来てるでしょう!)
したがって、V=100×105cm÷2.6×106年=10÷2.6=3.84cm/年→答え ②
解答番号 4 の答え ②
解答番号 5
ジオイド geoid 地球は高山があり、海溝がありきわめて凹凸が激しい形態をしています。「なめらかな地球表面」をもつ「地 球もどき」を=ジオイドとよんで、平均海面を内陸まで導いてできた球のような立体になります。地球は自転しているために赤道 方向にふくれた(南北方向に圧縮された)形態をしていて、このジオイドに最も近い回転楕円体を「地球楕円体」と呼んでいます 。
ジオイドと地球楕円体の凹凸差は+-20~30m程度しかありません。
オ → ジオイド、カ → 0.1km
解答番号 5 の答え ③
解答番号 6 参照HP No.8 週末課題 No.26、27、28
アイソスタシー問題の解答のは「ポイント① 質量=密度×長さ(深さ)」、「ポイント② 補償面上の物質の質量は等しい」で した。下図のように問題文に書き込むことができれば解答に至ります。
補償面Aには 厚さX、密度0.94g/cm3の氷河と厚さ40kmの地殻が、補償面Bには厚さ470m、密度3.4g/cm3のマントルと厚さ40kmの 地殻が乗っていて、それらによる補償面A、Bに加わる圧力は等しいことになります。
したがって、0.94 × X=3.4 × 470m、X=1700m → ③
解答番号 6 の答え ③
解答番号 7 参照HP No.10 「活火山 ③ 大陸縁・島弧」No.12 「大陸・縁海・島弧・海溝・海嶺系と変成作用、マグマ 発生の関係」の図
海洋プレート(玄武岩+かんらん岩(カンラン石+輝石))が海溝で沈み込みを行い、深さおよそ100km付近で海洋プレートから 脱水が 起こり、その結果アセノスフェアの部分溶融が行われ、玄武岩マグマが発生する-と考えられています。(No.12 「大陸 ・縁海・島弧・ 海溝・海嶺系と変成作用、マグマ発生の関係」の図)
キ → 輝石、 ク → 水 答え①
解答番号 7 の答え ①
解答番号 8
① 流紋岩質マグマに比べて, 噴出時の粘性が高い。 → マグマの結晶分化作用の進行に伴い、SiO4四面体のO原子の共有され る鉱物が多 く含まれることになります。(cF. HP No.6 鉱物 No.7 続鉱物)その結果、マグマの粘性は結晶分化作用が進ほ ど、つまり流紋岩質(花 こう岩質)マグマほど粘性が高く(大きく)なります。 → 誤り
② 玄武岩質マグマが固結してできた岩石は, 花こう岩質の岩石よりも放射性同位体の崩壊による発熱量が大きい。 → 放射性 同位体は どちらかといえば鉱物の原子の位置としての「座席」がないため、結晶分化作用が進めば進ほど掃き寄せられます。し たがって流紋岩質(花 こう岩質)マグマに濃集することになります。 → 誤り
③ ホットスポットでは,大陸地殼が部分溶融して玄武岩質マグマが生成される。 → HP No.10 ② ホットスポット参照 、HP No.12 プレートテクトニクス 図ーA
ハワイのように海洋プレートの深部に固定された玄武岩マグマを定常的に供給する場所をホットスポットと言っているので、「 大陸地殻の 部分溶融」は間違い。
④ 中央海嶺では, 高温のマントル物質が圧力低下によって部分溶融して,玄武岩質マグマが生成される。 → HP No.10 ①中央海 嶺 → 正しい
解答番号 8 の答え ④
第 2 間 (必答間題)
岩石・鉱物と地質に関する次の問い(A~C)に答えよ。[解答番号 1~ 5 ](配点 17)
A 変成岩に関する次の文章を読み,下の問い(問1・問2)に答えよ。
ある変成岩の組織や, 含まれる鉱物を調べたところ, 鉱物が面状に配列し, 縞状の構造をもっていた。また,(a)紅柱石と珪線石が含まれる一方, らん晶石は含まれていなかった。この岩石は ア 型の広域変成岩であり, イ で形成される。
間1 上の文章中の ア ・ イ に入れる語句の組合せとして最も適当なものを,次の①~④のうちから一つ選べ。 解答番号 1
間2 上の文章中の下線部(a)に関連して, 紅柱石と珪線石, らん晶石は, 多形の関係にある。 多形について述べた文として最も適当な ものを,
次の①~④のうちから一つ選べ。解答番号 2
① 化学組成が互いに異なるが, 密度は同じである。
② 石墨と黒雲母は,多形の関係にある。
③ 化学組成が同一で,結晶構造が異なる。
④ 温度や圧力の変化に伴い, 化学組成が連続的に変化する。
B 地質調査に関する次の問い(問3)に答えよ。
問 3 次の図1は, ある地域における地質調査の結果を地形図上に表したものである。 この地域に分布する地層は南北の走向を持ち, 西に45° 傾斜している。
地点aではイノセラムスが見つかっている。 地点bと地点cから見つかる可能性のある化石の組合せとし て最も適当なものを, 下の①~④のうちから一つ選べ。
ただし, 図の範囲内で地層の厚さは変化せず, 断層や褶曲、地層の逆転はな いものとする。 解答番号 3
C 河川による侵食・運搬・堆積と地形の形成に関する次の文章を読み,下の問い(間4・間5)に答えよ。
河川,(b)砕屑物の侵食, 運搬, 堆積を通じて特徴的な地形を形成することがある。たとえば、河川が急峻な山地から平地に流れ出る所では,河床の勾配が緩くなることや, 流路が広がることなどから,
河川が砕屑物を運搬する能力は低下する。こうした場所では砕屑物の中でも ウなものから堆積が進行し, エと呼ばれる地形が形成される。
間4 上の文章中の ウ ・ エ に入れる語の組合せとして最も適当なものを,次の①~④のうちから一つ選べ。 解答番号 4
間 5 上の文章中の下線部(b)に関連して, 砕屑物が, 流れのない平坦な水底に堆積している状態から, 徐々に流速を増す水流によって侵 食され運搬されるとき,最初に動き出すものはどれか。最も適 当なものを,次の①~④のうちから一つ選べ。
解答番号 5
① 礫 ② 砂 ③ シルト ④ 粘土
【第 2 問 解説・解答】
解答番号 1 参照HP No.12、No.13
解答番号 1 の答え ①
解答番号 2 参照HP No.13 「3 多形(または、同質異像)」
「多形(または,同質異像(どうしついぞう))」=「化学成分は同じでも、互いに結晶構造の異なる鉱物の関係」ですから、答えは ③ 容易に解答できたと思います。
解答番号 3 参照HP No.14,16
受験生泣かせの問題でしょう。配点も4点!必答問題と来ています。
地層の逆転がないかぎり、基本は「地層累重の法則」。これによって下位の地層は古く上位の地層は新しいわけですから、下位の地層には古い時代の化石が、上位の地層にはより新しい時代の化石が含まれることになります。
したがって、問題文で示された地質図から地層の上下関係を知る必要があります。そこで、受験生の皆さんには難関と思えるのが「地質図」・「地質断面図」になります。数学では「x・y座標」を理解しているでしょう「地質図」・「地質断面図」の理解は「x・y・z座標」の1次元だけ増えた座標だと思えば苦にならないのではないでしょうか。
地質図下の断面図の説明です。a地点は標高10m、地層の走向N-S、傾斜は45°Wですから、a点から、右から左下へ45°で層理面が描かれることになります。そして、化石として「イノセラムス」(中生代示準化石)が含まれています。
b地点は標高10m、地層の走向N-S、傾斜は45°Wですから、a点と同様に右から左下へ45°で層理面が描かれます。同様にc地点は標高40mで、断面図の標高40mの地点から左下へ45°で層理面が描かれます。 問題文でこの一帯は「断層も褶曲もなく地層の逆転がない」といっていますから、「地層累重の法則」から、c地点が最も下位で、b地点が中位、a地点が上位、つまり、c地点が最も時代が古く次がb地点、a地点が最も新しい地層ということになります。
さて、解答の核心になりますがa地点には化石に「イノセラムス」(中生代示準化石)が含まれるということは、b地点には少なくともa地点と同じ時代の化石か、それより古い化石が含まれなければなりません。
またc地点は、b地点より下位にありますからb地点より同じ時代の化石か、それより古い化石が含まれなければなりません。
以上からいえることは、
a地点=「イノセラムス」(中生代示準化石)≦b地点:より古いか等しい≦c地点:より古いか等しい
解答の選択肢をチェックしてみましょう。
① 地点b「トリゴニア」でOKですが、地点cは「ヌンムリテス(カヘイ石)」(新生代古第三紀示準化石) → 誤り
② 地点bは「トリゴニア」でOK、地点cは「フズリナ」(古生代石炭紀後期から二畳紀末示準化石) → 正解
③ 地点bは「フズリナ」でOK、地点cは「トリゴニア」で、地層の逆転、褶曲が起こっていることになる。 誤り
④ 地点bは「ヌンムリテス(カヘイ石)」で時代が逆転。 → 誤り
解答番号 3 の答え ②
解答番号 4 参照 HP No.15
問題文に「河川が急峻な山地から平地に流れ出る所」とありますから、解答の選択肢の エ 欄 の「三角州」は該当しません。三角州は「河川が海洋に接するところ」に形成されますね。 → ①と③は誤り
HP No.15 「地表の変化と物質循環」の「砕屑物の粒径と堆積の関係」のグラフを見てください。これは、礫・砂・泥の砕屑物を流水(当然砕屑物は移動しています)に放ったものを、次第に流水の速度を低下させていき、いくらの速度で堆積(流路=川底に止まった)したのか調べたものです。
感覚的に分かるように、礫のような大きく重いものは流速が弱まればすぐに堆積し、泥のような細かなものは水の流れがごくごくゆるやかになってもなかなか堆積しないだろうことは想像できます。→ ウは粗粒、エは扇状地となりますから答えは ④
解答番号 4 の答え ④
第 3 間 (必答間題)
大気と海洋に関する次の問い(A~C)に答えよ。 〔解答番号 1 ~ 8 〕 (配点 27)
A コリオリの力(転向力)と地球上での風に関する次の文章を読み, 下の問い(間1~3)に答えよ。
中高緯度の対流圈上部で観測される偏西風は, 気圧傾度力とコリオリの力がり合った風(地衡風)の典型例である。 (a)偏西風はしばしば持続的に南北に蛇行し, 異常気象を引き起こすことがある。一方, (b)地表付近では気圧傾度力とコリオリの力以外にさらに別の力が加わることにより, 実際の風の向きは地衡風の向きから少しずれる。
問 1 北半球の地上における気圧が次の図1のように分布しているとする。 この状態で地衡風が吹くとしたとき, その方向は図1中の A~ Dのうちどれか。最も適当なものを,下の①~④のうちから一つ選べ。 解答番号 1
図1 北半球における気圧の分布 実線は等圧線を示し,4hPaごとに描かれている。
① A ② B ③ C ④ D
問2 前ページの文章中の下線部(a)に関連して,持続的な偏西風の蛇行について述べた次の文 a・ b の正誤の組合せとして最も適 当なものを, 下の①~④のうちから一つ選べ。 解答番号 2
a コリオリの力のはたらく向きが北半球と反対になる南半球では, 偏西風の蛇行は発生しない。
b 偏西風の蛇行が小さくなると, ブロッキング高気圧が形成されやすくなる。
問 3 前ページの文章中の下線部(b)に関連して, 気圧傾度力とコリオリの力以外に地表付近で加わる別の力として最も適当なものを, 次の①~④のうちから一っ選べ。 解答番号 3
① 海水の表面張力
② 地球自転に伴う遠心力
③ 大気と地表との間の摩擦力
④ 地球の引力
B 大気と海洋の相互作用に関する次の文章を読み,下の問い(間4・問5)に答えよ。
エルニ一ニヨ (エルニーニョ現象)は, 赤道太平洋において大気と海洋が相互に影響を及ぼしあって数年に一度発生する。 平年状態の赤道太平洋では,
貿易風によって表層付近の暖水が西側に吹き寄せられている。 一方, エルニーニョの起こっているときの状態では, (c)平年状態とくらべて貿易風が弱まることで赤道太平洋の東西で海水温が変化し,雲の発達する場所も移動する。
間 4 エルニーニヨが起こっているときの現象について述べた次の文 a ・ b の正誤の組合せとして最も適当なものを, 下の①~④のうちから 一つ選べ。 解答番号 4
a 熱帯太平洋の気圧の東西差が, 平年状態とく らべて異なる。
b 日本の冬が, 平年状態とくらべて寒くなる傾向にある。
問5 前ページの文章中の下線部(c)に関連して, エルニーニョが起こっているときの状態を示す模式図として最も適当なものを, 次の①~④のう ちから一つ選べ。
解答番号 5
C 海水の運動に関する次の文章を読み, 下の問い(間6~8)に答えよ。
海洋ではさまざまな原因で,海水の運動が生じている。偏西風と貿易風にはさまれた北半球の亜熱帯域では, 風によって引きずられる海面付近の海水がコリオリの力により風に対して
ア 流されるため, 海域中央部の海面が高くなる。それに応じて環流(亜熱帯環流)が生じ, さらに, 海流に対する地球自転の効果が緯度によって異なるため,
環流の イ にある流れが強くなる。一方, 地球上に(d)潮汐を引き起こす力(起潮力)を及ぼすのは,月と太陽である。また,地震で海底が急激に隆起・沈降すると,(e)津波が発生する。
問6 上の文章中の ア・ イ に入れる語句の組合せとして最も適当なものを,次の①~⑥のうちから一つ選べ。 解答番号 6
問7 前ページの文章中の下線部(d)の潮汐について述べた次の文a・ bの正誤の組合せとして最も適当なものを, 下の①~④のうちから一つ 選べ。 解答番号 7
a 地球が自転しているため, 多くの場所で満潮がほぼ1 日に2回ある。
b 地球,月,太陽の位置関係から,満月のときは大潮,新月のときは小潮になる。
問 8 前ページの文章中の下線部(e)に関連して, 地点Aで発生した津波が60km離れた地点BにおいてT分後に観測された。 地点AB間の水深は 1000 mで, 一定であるとする。 このとき時間Tの数値として最も適当なものを, 次の①~④のうちから一つ選べ。ただし, 重力加速度の大き さは,10m/s2とする。 解答番号 8 分後
① 6 ② 10 ③ 60 ④ 100
【第 3 問 解説・解答】
解答番号 1 参照HP No.18 「転向力(コリオリの力)、地衡風・地衡流」
北半球においては「地衡風・地衡流は高圧部を右にみて等圧線に平行に吹く(流れる)」と教科書で習っています。提示された図図は東側が高圧ですから、「東を右にみて等圧線に平行に吹く」ので空気塊は北へ、つまり南→北の風になります。 → A
解答番号 1 の答え ①
解答番号 2 参照HP No.19 「大気の構造」
「a コリオリの力のはたらく向きが北半球と反対になる南半球では, 偏西風の蛇行は発生しな」ければ、南半球では偏西風の蛇行 に伴う温帯低気圧や高気圧が発生しないことになります。 → 誤り
「b 偏西風の蛇行が小さくなると」が誤り。蛇行が大きくなると高緯度地方に高気圧が停滞するようになり、異常気候が続く( 異常高温)ことになります。 → 誤り
解答番号 2 の答え ④
解答番号 3 参照HP No.18 「転向力(コリオリの力)、地衡風・地衡流」 「4 地上風」
「地上風」の力のつり合いは教科書にも図示されています。→ 大気と地表との間の摩擦力
解答番号 3 の答え ③
解答番号 4 参照HP No.19 「大気の晃造 図-3」
問4 はエルニーニョについての結構詳しい知識を尋ねています。
「a 熱帯太平洋の気圧の東西差が, 平年状態とく らべて異なる」は「南方振動」のことですが、これを知らなくても「とりつく島 」はあります。問題文に、「平年状態とくらべて貿易風が弱まることで赤道太平洋の東西で海水温が変化し,雲の発達する場所も移 動する。」とあります。南半球の南東貿易風とあわせて赤道低圧帯を形成している一帯が、「移動する」とありますから、気圧も 所によって違いがあるはずだと考えるでしょう。問5の①~④の図はまさに明らかなヒントです。雲があって雨が降っているとこ ろは上昇気流が生じており、周囲より気圧は低いに違いない-そう気づくはずです。 → a は正しい
「b 日本の冬が, 平年状態とくらべて寒くなる傾向にある」 エルニーニョはペルー沖の海水温の変化(上昇)が海流や大気・気 圧配置に変動を及ぼす現象で、普段ニュースを見聞きしていて何の疑問もなく「エルニーニョの時は日本は暖冬」と答える人もい るでしょう。しかし、そのような暖冬になるメカニズムは結構複雑ですし、また「エルニーニョの時=日本は暖冬」とも一概には 言えないという見解もあります。 → b は誤り
解答番号 4 の答え ②
解答番号 5
問題文に「平年状態の赤道太平洋では, 貿易風によって表層付近の暖水が西側に吹き寄せられている」とあり「一方, エルニーニ ョの起こっているときの状態では, 平年状態とくらべて貿易風が弱まり・・・雲の発達する場所も移動する」とあります。このこ とから考えられるのは「エルニーニョが起こっているときの状態」は「表層付近の暖水」は西側に吹き寄せられないのですから、 ②と④は答えとして不適切です。
「平年状態の赤道太平洋では, 貿易風によって表層付近の暖水が西側に吹き寄せられ」暖水塊から水蒸気が蒸発して雲が形成・雨 が降っているわけです。吹き寄せる貿易風が弱まわるわけですから「雲と降雨の地域は東に戻される」と考えられます。 → ①
解答番号 5 の答え ①
解答番号 6 参照HP No.25 「海洋」
ア は「水送流」。海面に定常的な風が吹き続けると海水は移動しますが、転向力が右向きに働らきます。 → ア=「右にそれ て」、① または ②
イ は西岸強化のことを尋ねていますから、イ → 「西側」
解答番号 6 の答え ①
解答番号 7 参照HP No.25 「海洋」「⑩ 潮汐」
解答選択肢 「a 地球が自転しているため, 多くの場所で満潮がほぼ1 日に2回ある。」
潮汐が起こるのは、月の引力と月-地球の共通重心まわりの遠心力です。でNo.25 「海洋」「⑩ 潮汐」図-16、17 に示さ れたような「膨らんだ海水」の中を地球が自転するために満潮、干潮が起きます。
b 地球,月,太陽の位置関係から,満月のときは大潮,新月のときは小潮になる
No.25 「海洋」「⑩ 潮汐」図-16、17 から上の下線部分は誤りですね。
解答番号 7 の答え ②
解答番号 8 参照HP No.25 「海洋」「⑨ 津波の速度・威力」
V=津波の速度(m/秒)、g=重力加速度(m/秒2)、h=平均水深(m) v=√gh
V=√10・1000=100m/秒、 60kmの距離を津波が100m/秒の速度でいくら時間がかかるか求めればよいので、
T=60・1000m÷100m/秒=600秒=10分 → ②
解答番号 8 の答え ②
第 4 間 (必答間題)
宇宙に関する次の問い(A・B)に答えよ。 〔解答番号 1 ~ 5 〕(配点 17)
A 次の図1は, へルッシュプルング・ラッセル図(HR図)上での星の分布を模式的に示したものである。 この図に関する下の問い(問 1~3)に答えよ。
問 1 上の図1中のXに位置する星の性質について述べた文として最も適当なものを,次の①~④のうちから一つ選べ。 解答番号 1
① 半径が太陽の100倍以上の星もある。
② 表面温度がZに位置する星より高い。
③ 地球からはどの星も1等星より明るく見える。
④ 肉眼ではどの星も青自く見える。
問2 前ページの図1中のX,Y,Zと,星の進化との関係について述べた文として最も適当なものを,次の①~④のうちから一つ選べ。 解答番号 2
① 生まれた直後の星は,Zに位置する。
② 核融合反応が進むにつれ,星はY内を移動し,左上端に到達する。
③ 太陽程度の質量の星は,Yに長期間とどまったのちXを経由してZに至る。
④ 質量の非常に大きい星は,誕生から終末までXに位置する。
問 3 スペクトル型がK型で, 距離2パーセクにあり, 見かけの明るさは5等級の星1がある。 また, スペクトル型がB型で, 距離 200パーセクにあり, 見かけの明るさは同じく5等級の星2がある。 星1と星2は, それぞれ前ページの図1中のX,Y,Zのどこに位置す るか。その組合せとして最も適当なものを, 次の①~④のうちから一つ選べ。 解答番号 3
B 金星に関する次の問い(間4・問5)に答えよ。
問4 金星について述べた文として最も適当なものを, 次の①~④のうちから一つ選べ。 解答番号 4
① 自転周期は地球よりも短い。
② 表面全体がクレーターに覆われている。
③ 水素やヘリウムからなる, 厚い大気で覆われている。
④ 表面温度は400℃以上になる。
問5 金星の公転軌道上における, 太陽方向に垂直な単位面積・単位時間あたりの太陽放射エネルギーは, 地球公転軌道上における 値の約2倍である。
入射する太陽放射エネルギーに対する, 金星と地球の反射率を, それぞれ0.8と0.3としたとき, 金星が受け取る 太陽放射エネルギーは, 地球が受け取る値の約何倍か。
その数値として最も適当なものを, 次の①~④のうちから一つ選べ。 ただ し, 金星と地球の半径の違いは無視できるものとする。 解答番号 5
① 0.3 ② 0.6 ③ 2 ④ 5
【第 4 問 解説・解答】
解答番号 1 参照HP No.32 図-7の説明並びに、図-8
① 半径が太陽の100倍以上の星もある。 → X は巨星で、HP No.32 図-7の説明並びに、図-8 より正しい。
② 表面温度がZに位置する星より高い。 → Xのスペクトルは「K・M」と低温であるのに対し、Zのはスペクトルは「B・A」で 高温である。 → 誤り
③ 地球からはどの星も1等星より明るく見える。 → HR図はすべての星を、縦軸に絶対等級=距離にして10PC(32.6光年) に、 横軸をスペクトル型(温度)で表現しています。HR図上の星はそれぞれ様々な距離にあるわけですからすべての星が1等星より 明るく見えたり暗く見えたりすることはないですよね。→ 誤り
④ 肉眼ではどの星も青自く見える。→ スペクトル型O、Bは高温で青白く、K、Mは低温でオレンジ~赤色を示しますから → 誤り
解答番号 1 の答え ①
解答番号 2 参照HP No.32
① 生まれた直後の星は,Zに位置する。→ Zは白色矮星。恒星のほとんどは主系列星=Yで過ごす。 → 誤り
② 核融合反応が進むにつれ,星はY内を移動し,左上端に到達する。→ 光度を増すことがあっても「左上端に到達する」ことはなく巨星化に向 かう。
③ 太陽程度の質量の星は,Yに長期間とどまったのちXを経由してZに至る。→ 正しい
④ 質量の非常に大きい星は,誕生から終末までXに位置する。→ 誕生時から巨星ということはないので誤り
解答番号 2 の答え ③
解答番号 3 参照HP No.32 図-2
この問題も難問です。①「絶対等級を求めて」正攻法・力づくで解くか、②「エイ!、ヤア!」とばかりに決めてしまうか-でしょうか。
①「絶対等級を求めて」正攻法・力づくで解く
HR図上で星1・星2がどのような位置に来るかが問題ですから、それぞれの絶対等級を調べなければなりません。
皆さんは「距離指数の公式」を知っています。M-m=5-5log10d でした。問題文を読めばこの公式にとりあえず代入でき る数値が与えられているのに気づきます。
星1について:M星1=星1の絶対等級、m星1=星1の実視等等級=+5、d星1=星1までの距離=2PC、となりますから
M星1-5=5-5log102、M星1=10-5log102=10-log101024、乱暴ながら log101024=log101000 とすれば log10 1000 =3、 M星1=10-5log102=10-log101000=7、星1の絶対等級は+7等 (スペクトル型G型)
星2について:M星2=星2の絶対等級、m星2=m星1の実視等等級=+5、d星2=星1までの距離=200PC、となりますから M星2-5=5-5log102×102、M星2=10-5(log102+log10102)=10-5log102-5log10102=+7-10=-3、 星2の絶対 等級は-3等 (スペクトル型B型)
それぞれの星のスペクトルはそのままで変化しませんから、HR図にプロットします。(しなくても分かる人はそのままで・・)
と言うことから星1も、星2も主系列星 → Y エリア であることが分かります。
①’ 「こんなことやってたら、センター試験の解答時間に間に合わないんじゃないの~」そう言う受験生もいるでしょう。では、 星1と星2は実視等級が+5等で等しく星1は2PCの距離にあり、星2は200PCの距離にあると問題文にあります。
星1と星2の見かけの明るさ(実視等級)は同じで、距離が100倍(200PC÷2PC)も星2が遠いところにあります。「星の明るさ は距離の2乗に反比例」しますから、遠くにあって近くにある星と同じ明るさ(実視等級+5等)に見えるということは、星2は、星 1の1002倍明るいことになります。5等差で100倍の光度差ですので、明るさの1002 倍では10等小さく(明るく)なります。 → 手がかり 1 星2は、星1の絶対等級等級より10等小さい
次に、星1または星2の絶対等級等級を求める。星1の場合、星1の距離は2PC。10pcの距離まで下げて絶対等級等級を求めますか ら、距離は5倍、明るさは1/25(明るさは距離の2乗に反比例)になります。光度1等差あたり5√100=2.51倍の差がありました。
1/2.513 < 1/25 < 1/2.514、 (大体 1/15.8 <1/25 < 1/39.7) で 星1の絶対等級は、見かけの5等に3.5等 加わり8.5等とみられること? → 手がかり2 星1の絶対等級は8.5等くらい
以上により星2は絶対等級は1.5等くらい(8.5等-10等)、スペクトル型はB、星1は絶対等級は8.5等くらいでスペクトル型は Gとなり、HR図上でどちらも主系列星 → Y エリア
② 「エイ!、ヤア!」とばかりの解答方法(解答に到るまで1分)まず、星1は距離は2PCで、絶対等級を求めるため10PCまで 遠ざけなければならない。ということは見かけの5等より大きくなるから X エリアに入ることは絶対ない。また、スペクトル型は Gで Z エリアに入ることもない-と考えます。 → 星1は Y エリア
次に星2は距離は200PCですから、10PCまで近づけられ見かけの5等より小さくなるはずです。ですから、Z エリアに入ることは ありません。HR図上では、スペクトル型Bを上にさかのぼり → 星2も Y エリア
解答番号 3 の答え ③
解答番号 4 参照HP No.26 「1 太陽系」
① 自転周期は地球よりも短い。 → 「地球型惑星はゆっくり(自転周期は長い)、木星型惑星は速く(自転周期は短い)自転している」 → 誤り
② 表面全体がクレーターに覆われている。 → 山脈のあることは分かっているがクレーターは見つかっていない→ 誤り
③水素やヘリウムからなる, 厚い大気で覆われている。 → 「地球型惑星の大気はあっても窒素・二酸化炭素 → 誤り
④ 表面温度は400℃以上になる。 → 二酸化炭素を主成分とする濃厚な大気にによる温室効果のため、高温・高圧の状態 → 正しい
解答番号 4 の答え ④
解答番号 5 参照HP No.17 太陽からのエネルギー供給、熱収支
これは難しくはないでしょう。問題を異訳すれば、「金星は太陽から200円もらって8割返し、地球は100円もらって3割返しま した。金星の持っているお金は地球の持っているお金の何倍ですか?」0.57倍ですね。
解答番号 5 の答え ②
第5 問・第6 問は,いずれか1問を選択し,解答しなさい。
第 5 間 (選択間題)
地質と岩石に関する次の問い(A ・ B)に答えよ。〔解答番号 1 ~ 4 〕(配点 12)
A 地質時代の気候と地質構造に関する次の問い(間1・間2)に答えよ。
間1 地質時代の気候について述べた文として最も適当なものを, 次の①~④のうちから一つ選べ。 解答番号 1
① 原生代を通じて全球凍結状態が続いた。
② 石炭紀後半からぺルム紀前半にかけて温暖化が進行した。
③ ジュラ紀には寒冷な気候が長く続いた。
④ 第四紀には氷期と間氷期がほぼ周期的にくり返された。
間2 次の図1は,ある地域の地質構造を模式的に示したものである。ただし,中央部に存在する断層fより西側の地質構造は示していな い。
この地域には, 走向が東西で北に45°傾斜する礫岩層と砂岩層のみが全域に分布する。また,断層fは走向が南北で,鉛直方向の変位 がない右横ずれ断層であり,
一度だけ活動し, そのずれは5mであった。
断層西側の地点Pで鉛直方向にボーリング調査を行ったとき, 礫岩層と砂岩層との境界は地下約何mであらわれるか。 その数値と して最も適当なものを,
下の①~④のうちから一つ選べ。 解答番号 2
① 5 ② 10 ③ 15 ④ 20
B 火成岩に関する次の文章を読み,下の問い(間3・問4)に答えよ。
かんらん石と斜長石の斑晶を含む火山岩Aと, 石英,斜長石,カリ長石,黒雲母から構成される深成岩Bを採取した。 これらの岩石お よび構成鉱物の化学組成を調べたところ, 火山岩AのSiO2含有量は約 ア重量%であった。また深成岩Bに含まれる斜長石は, 火山岩 Aに斑晶として含まれる斜長石にくらべて イに富んでいた。
間3 上の文章中の ア ・イ に入れる数値と元素の組合せとして最も
適当なものを,次の①~④のうちから一つ選べ。 解答番号 3
間4 上の文章中の下線部の岩石について述べた文として最も適当なものを, 次の①~④のうちから一つ選べ。 解答番号 4
① 有色鉱物の占める割合が高いため,黒つぼい色調を示す。
② マグマがゆっくり冷え固まってできたため, ガラス質の物質に富む。
③ 他の鉱物のすき間を埋めて成長した, 他形を示す結晶が含まれる。
④ 含まれる有色鉱物は, SiO4四面体が鎖状につながった骨組みをもつ。
【第5 問 解説・解答】
解答番号 1 参照HP No.14 「地質年代区分と化石・古生物」
① 原生代を通じて全球凍結状態が続いた。 → 原生代は「アメーバ、有孔虫のような「原生」動物の栄えた時代」で全球凍結状 態となれ ば原生動物は存在しなかった。 → 誤り
② 石炭紀後半からぺルム紀前半にかけて温暖化が進行した。 → 石炭紀からぺルム紀(二畳紀)は氷河時代で寒冷であった。 → 誤り
③ ジュラ紀には寒冷な気候が長く続いた。 → 中生代は全般に温暖で生物は大型化した。 → 誤り
④ 第四紀には氷期と間氷期がほぼ周期的にくり返された。。 → 第四紀には四回の氷期が訪れ、1万年前に訪れたウルム氷期は 最も寒冷で あったとされています。 → 正しい
解答番号 1 の答え ④
解答番号 2 参照HP No.16 堆積物と層序
地質図、地質断面図を得意とする受験生は多くないでしょう。しかし、この問題は比較的易しめで、北への水平方向の「右ずれ 断層」が一度きりで、礫岩・砂岩の走向が東西で、しかも傾斜が北へ45°(水平方向に1進めば、鉛直方向に1深くなる)という- そのような「サービス問題」といえます。ただし、「右ずれ断層」の意味が受験会場で「あれ?、どっちがどっちに動くんだった ?」、となると「終わって」し まいます。センター試験は教科書レベルの基本をおさえておくことで十分高得点をとることがで きます。
問題文の図1の断層面の西側地域をスケッチ風に描けるといいのですが・・・。
(1)断層前:れき岩層と砂岩層は走向E-W、45°北傾斜ですから、れき岩層と砂岩層の地層境界線は図の0mの基準線から北へ 5mの所へ東西に現れます(下図 左参照)。ボーリング地点Pとれき岩層と砂岩層の境界地点は水平距離で15m。傾斜は45°です からボーリング地点Pから鉛直にボーリングをすれば15mでれき岩層に達します。
(2)断層形成後:「右横ずれ断層」すから、西側地域は5m北へ変位(移動)します。下図(右)のように水平距離でボーリング地 点に10mまで近づきます。45°の傾斜は変わりありませんから、Pからボーリングをすれば10mでれき岩層に達します。
解答番号 2 の答え ②
解答番号 3 参照 HP No.9 火成岩 「火成岩の分類」の項参照
火山岩A:かんらん石と斜長石の斑晶を含む とありますからSiO2<52%、色指数>35の火山岩=玄武岩と考えられます。
深成岩B:石英,斜長石,カリ長石,黒雲母から構成される とありますから「火成岩の分類」の図から花こう岩と考えられます。し たがってこの岩石に含まれる斜長石は Naに富むとことになります。(「火成岩の分類」 火成岩の鉱物組成の図参照) ア → 50% イ → Na
解答番号 3 の答え ①
解答番号 4
① 有色鉱物の占める割合が高いため,黒つぼい色調を示す。 → 石英,斜長石,カリ長石,黒雲母という鉱物組み合わせから花こう 岩と考えられ、花こう岩の色指数は<10で白っぽい岩石。 → 誤り
② マグマがゆっくり冷え固まってできたため,ガラス質の物質に富む。 → 問題の深成岩は地下深所で徐冷されてできますから 、急冷されてできる火山ガラスは含まれません。(No.9 火成岩 ) → 誤り
③ 他の鉱物のすき間を埋めて成長した, 他形を示す結晶が含まれる。 → 結晶分化作用で後から晶出鉱物は、最初にできた鉱物 のすき間に成長することになり、自形となりません。 → 正しい
④ 含まれる有色鉱物は, SiO4四面体が鎖状につながった骨組みをもつ。 → 鎖状につながった骨組みをもつ鉱物は輝石、角閃石 で、黒雲母は平面的網状構造。(HP No.6 鉱物) → 誤り
解答番号 4 の答え ③
第 6 問 (選択間題) 宇宙に関する次の問い(A・B)に答えよ。〔解答番号 1 ~ 4 〕(配点 12)
A 宇宙の構成要素に関する次の文章を読み, 下の問い(間1 ・問2)に答えよ。
宇宙は, 恒星や星間物質など電磁波で直接観測できる物質(通常の物質)のほか, 直接には観測できない構成要素(ダークマター, ダークエネルギー)からなると考えられている。(a)通常の物質は, 水素とヘリウム, それ以外の重い元素から構成されている。
間 1 上の文章中の下線部(a)に関連して, 宇宙の元素について述べた文として最も適当なものを,次の①~④のうちから一つ選べ 。 解答番号 1
① 炭素, 酸素の一部は, ビッグバンによりつくられた。
② 超新星爆発によって,鉄より重い元素がつくられた。
③ 種族IIの星は,種族Iの星にくらべて重い元素の割合が多い。
④ ヘリウムの大部分は, 恒星内部の核融合によりつくられた。
問 2 現在の宇宙の構成要素および現在の太陽の元素組成を示す図は, それぞれ次の図a・bおよび図 c・dのうちどれか。そ の組合せとして最も適当なものを,下の①~④のうちから一つ選べ。 解答番号 2
B 天体に関する次の文章を読み,下の問い(間3・間4)に答えよ。
銀河系には(b)さまざまな形状の天体が観測される。 次に示す天体画像a~d のうち, 画像 ア に示す天体は, 種族IIの星から構成 される星団であり, 銀河面から離れた領域にも存在する。 画像 イ に示す天体は, 質量が太陽の約8倍以上ある恒星の終末の姿であり, 可視光のほか電波やX線などでも観測される。
間3 上の文章中の ア・ イ に入れる画像の組合せとして最も適当なものを,次の①~④のうちから一つ選べ。 解答番号 3
問 4 前ページの文章中の下線部(b)に関連して, 天体の形状や分布について述べた文として最も適当なものを, 次の①~④のうちか ら一つ選べ。
解答番号 4
① 銀河系の渦巻構造は,赤外線による水素分子の観測で見つかった。
② バルジでは, 渦巻銀河全体を取り囲むように恒星が分布している。
③ ハッブルは,銀河の形状に注目して,銀河の分類を行った。
④ 電波銀河の形状は,可視光でも電波でも,ほぼ同じように観測される。
【第6 問 解説・解答】
解答番号 1 参照 HP No.32 恒星の世界
① 炭素, 酸素の一部は, ビッグバンによりつくられた。→ ビッグバンによって水素・ヘリウムが作られ、その後第1世代の恒星の 内部で炭素・酸素などの元素が作られた。 → 誤り
② 超新星爆発によって,鉄より重い元素がつくられた。 → 鉄より重い元素は外からエネルギーを加えられなければ作られない。 超新星爆発の前段の爆縮に一期に作られる。 → 正しい
③ 種族IIの星は,種族Iの星にくらべて重い元素の割合が多い。 → 種族IIの星は銀河系が誕生したころの古い第1世代の恒星で、 重い元素は含まれていない。→ 誤り
④ ヘリウムの大部分は, 恒星内部の核融合によりつくられた。→ ①の説明と同じ。宇宙の始まりの初期の段階に作られた。
解答番号 1 の答え ②
解答番号 2 参照 HP No.31 図-30
宇宙の構成要素:宇宙の恒星や銀河は数%、残り1/4は暗黒物質(ダークマター)、3/4がダークエネルギーと言われています。 → a
太陽の元素組成:太陽の年齢は50億年。水素の核融合反応を行いヘリウムを生み出し輝いています。50億年たっても水素はヘリウムの10倍近くもあります。 → c
解答番号 2 の答え ①
解答番号 3 参照 HP No.32 恒星の世界
画像a は球状星団(種族Ⅱ(第1世代)の恒星の集団からなる))、bは散開星団(種族Ⅰ(第2世代)の恒星の集団からなる)) 、cは惑星状星雲(主系列星→赤色巨星となったとき、重力が小さいため星の外側のガスを引き留めておけず、宇宙にリング状に拡 散)、dは超新星爆発(太陽の10近くの質量の恒星の最終段階)-です。したがって
画像 ア → a 、画像イ → d となりますから
解答番号 3 の答え ②
解答番号 4 参照 HP No.32 恒星の世界
① 銀河系の渦巻構造は,赤外線による水素分子の観測で見つかった。 → 「赤外線」ではなく「電波」 → 誤り
② バルジでは, 渦巻銀河全体を取り囲むように恒星が分布している。 → 「恒星」ではなく「球状星団」 → 誤り
③ ハッブルは,銀河の形状に注目して,銀河の分類を行った。→ ハッブルは銀河大きく4つに分類、形態進化するのではと考えま した(現在はその考えは否定されています)。 → 正しい ④
電波銀河の形状は,可視光でも電波でも,ほぼ同じように観測される。 → 可視光で銀河の形(楕円)と、電波が強く放出され る位置・形は異なる。 → 誤り
解答番号 4 の答え ③
2018年センター試験地学 正解・配点
2018年 センター試験 地学基礎 解答番号 [1 ~15]
第 1 問 地球に関する次の問い(A~D)に答えよ。(配点27)
A 地球の構造と地震に関する次の問い(問1 ~3)に答えよ。
問 1 地球全体に対する核の大きさを表した断面図として最も適当なものを, 次の①~④のうちから一つ選べ。 ただし, 灰色の領域は 核を, 実線は地球の表面を表し,断面は地球の中心を通る。 解答番号 1
問2 地殼とマントルについて述べた次の文a・bの正誤の組合せとして最も適当なものを,下の①~④のうちから一つ選べ。
解答番号 2
a リソスフェアは, アセノスフェアよりやわらかく流動しやすい。
b 地殼とマントルの境界(モホロビチッチ不連続面)は, 大陸地域よりも海洋地域のほうが深い。
問 3 次の図1は, ある地域における震源距離と地震発生からP波到達までの時間との関係を示したものである。 また, この地域では. 震源距離D〔km〕と初期微動継続時間T〔秒〕について,D=8.0
Tという関係がある。
この地域で発生したある地震において, 地震発生から3.0秒後に緊急地震速報が受信された。 震源距離40kmの場所では, S波到達は緊急地震速報の受信後何秒後か。
その数値として最も適当なものを, 下の①~④のうちからーつ選べ。 ただし, 緊急地震速報はこの地域全域において同時に受信されるとする。 解答番号 3 秒後
B 地質に関する次の文章を読み,下の間い(問4・問5)に答えよ。
ジオくんは, 次の図2(a)に示したある地域の道路沿いの露頭Xから露頭zまでの地質を調べた。 露頭Xでは花こう岩と結品質石灰岩を観察し, 露頭Yでは図2(b)のスケッチを作成した。
露頭Xの結品質石灰岩は, 露頭Yと同じ石灰岩が変成した岩石である。 また, 露頭Zでは露頭Yと同じ泥岩が露出していた。
問4 上の図2(b)に示した露頭Yで観察された岩脈,不整合,褶曲が形成された順序として最も適当なものを, 次の①~④のうちから一つ選べ。 解答番号 4
① 褶曲 →不整合→岩脈
② 褶曲 →岩脈 →不整合
③ 不整合→褶曲 →岩脈
④ 不整合→岩脈 →褶曲
問 5 露頭Yでみられた不整合面上の磯岩には, 露頭Xの花こう岩が礫として含まれていた。また, 露頭Xlの花こう岩:は白亜紀に形成されたことがわかっている。 露頭Yの石灰岩と露頭Zの泥岩から産出する可能性のある化石の組合せとして最も適当なものを, 次の①~④のうちかち一つ選ぺ。 解答番号 5
C 次の図3は, 含まれるSi02の割合による火成岩の区分とおもな造岩鉱物の量(体積%)を示している。火成岩に関する下の間い(問6・問7)に答えよ。
問 6 上の図3中のA~Cに入れるおもな造岩鉱物の組合せとして最も適当なものを,次の①~⑥のうちから一つ選べ。
解答番号 6
問 7 ある火成岩は4種類のおもな造岩鉱物から構成されていた。 それらの量を計測したところ, 石英の量が20体積%であった。 この岩石の色指数を前ページの図3から求めた場合,その数値として最も適当なものを,次の①~④のうちから一つ選べ。
解答番号 7
① 10 ② 40 ③ 60 ④ 90
D 変成作用に関する次の間い(問8)に答えよ。
問 8 変成作用およびそれによって生じる岩石について述べた文として, 誤つているものを,次の①~④のうちから一つ選べ。
解答番号 8
① 結晶片岩では,変成鉱物が一方向に配列した組織が見られ,面状にはがれやすい。
② 接触変成作用は, マグマとの接触部から幅数十~数百kmにわたっておこる。
③ 片麻岩は鉱物が粗粒で, 白と黒の縞模様が特徴である。
④ ホルンフェルスは硬くて緻密である。
【第 1 問 解説・解答】
解答番号 1 参照HP 「No.3 地球を構成する物質」
地球の半径6400kmに対して、核(内核+外核)の半径は3500km。「地球の半径の半分よりやや大きい」と記憶にあれば、正解に行きつくでしょう。→ 正解 ②
解答番号 2 参照HP 「No.4 地震」、「No.12 プレートテクトニクス」
プレート(リソフェア=lithosphere=球殻状の岩盤、litho=岩石、岩盤、固い。sphere=球面)=地殻と冷えて固くなった上部マントルの一部で、アセノスフェア(ascenosphere=プレート(リソフェア)の下の高温で柔らかく流動性のある部分でした。
一方、HP 「No.4 地震」図7の「ひとみちゃん学習のポイント」にあるように「地殻の厚さは海洋では5~10km、大陸では30~50km」とされています。
以上のことが抑えられていれば、
a リソスフェアは, アセノスフェアよりやわらかく流動しやすい。→誤り
b 地殼とマントルの境界(モホロビチッチ不連続面)は, 大陸地域よりも海洋地域のほうが深い。→誤り
a,bも誤り ですから →正解 ④
解答番号 3 参照HP 「No.4 地震 1 大森公式」、週末課題 No.8 地震波・大森公式
この問題の「解答への道筋がなかなか見えにくい」受験生泣かせの問題の一つでは。
この問題は、「歴史年代表」問題と言えます。ですから、上のように時系列でイベント(起こったこと)を表すことが出来れば、言葉で理解しようとするよりも一目瞭然です。
では「年代表」をどのように書けばいいのでしょうか。まず、地震発生を0秒とします。
次に緊急地震速報受信は地震発生3秒後とあります。図1から、P波は地震発生後6秒後に40km地点に到着しています。
問題は、S波到着が地震発生から何秒後かを求めれば、解答に至ることが分かります。
では、S波到着が地震発生から何秒後になるか?考えましょう。
震源距離40kmの地点とありますから、問題文にあるD=8.0Tの式でD=40kmを代入、初期微動継続時間T(観測地点にP波が到着してからS波が遅れて到着するまでの時間差)は、T=5秒となります。
初期微動継続時間T=5秒ですからS波は地震発生後、11秒後(6秒+5秒)40km地点に到着します。
緊急地震速報受信は地震発生3秒後、「緊急地震速報受信3秒後→S波到着地震発生11秒後」ですから、「S波到着は、緊急地震通報が受信されてから8秒後」となります。→正解 ④
(別解)受験生皆さんの中には、詳しい大森公式からVsを求め、それで40kmを割ってS波の所要時間を求め、緊急地震速報受信からS波到着までの時間を求める-そのような手を使った人もいたでしょう。
すなわち、D=40km、T=5秒、図1からVp=20/3km/秒と読み取られますから、
Vs=40/11km/秒と計算されます。
D=40kmをVs=40/11km/秒で割ると、S波の所要時間(40km地点にいたるまでの)が出てきます。11秒ですね。緊急地震速報受信は地震発生3秒後ですから、11秒−3秒=8秒 答え④となります。
しかし、この解きかたは時間がかかりまた大森公式をいじくりまわしているうちに計算間違いをする危険があります。
大森公式D=k・T 式のT=初期微動継続時間の意味するところが「P波が届いてからS波が届くまでの時間」あるいは「S波の遅れの時間」と分かっていれば、別解のような危ない橋をわたることはないでしょう。
解答番号 4 参照HP「No.16 堆積物と層序 2 地層、3 露頭の観察・層序」、
地層の堆積・整合・不整合・断層・褶曲・岩脈の貫入など地質現象の前後関係の判断の基本は、ステノの「地層累重の法則」が基本になります。
図2(b)に示された露頭の観察から考えられる地質現象は次のようになります。
①堆積岩・石灰岩の堆積と褶曲
②砂岩・石灰岩の(堆積盆の)上昇・浸食、不整合面の形成
③礫岩の堆積→泥岩の堆積
④岩脈の貫入
⑤(堆積盆の)上昇・陸化
以上を踏まえれば図2(b)に示された一帯の地質現象の順序は「褶曲→不整合→岩脈」となります。→正解 ①
解答番号 5 参照HP「No.17 地質年代区分と化石・古生物」
ここでのポイントは石灰岩が花こう岩(時代白亜紀)から接触変成をうけて「結晶質石灰岩」となっていることです。したがって、砂岩・石灰岩の時代は白亜紀より古くなります。化石「ビカリア」は新生代第三紀示準化石、「三葉虫」は古生代の化石となりますから、解答の候補は③または④。
不整合面上の礫岩に花こう岩が含まれるとありますから、礫岩・泥岩の時代は第三紀以降となります。「クックソニア」はシルル紀中期の最古の陸上植物、「デスモスチルス」は新生代第三紀です。
「三葉虫」+「デスモスチルス」が正解の組み合わせになります。→正解 ④
解答番号 6 参照HP「No.9 火成岩」火成岩・鉱物組成
④ A カンラン石 B 輝石 C 角閃石
解答番号 7 参照HP「No.9 火成岩」色指数(colour index)の計算
「石英が20%含まれる」とありますから、図3上で石英が20%含まれるところを探し出し、赤く縦線を引きます。
すると無色鉱物の「カリ(正)長石」は40% 、「斜長石」は30%で石英と合わせて、無色鉱物は90%、有色鉱物の黒雲母は10%であることが分かります。
ですから岩石全体に占める有色鉱物の占める割合=色指数は10ということになります。→正解 ①
解答番号 8 参照HP「No.13 変成作用と変成岩」、「No.12 プレートテクトニクス」大陸・縁海・島弧・海溝・海嶺系と変成作用、マグマ発生の関係
②の「幅数十~数百km」と接触変成帯の起こる範囲が「km」単位で大きすぎる点が誤り。
第 2 問 次の文章は,科学者の寺田寅彦による随筆「茶碗の湯」(大正11年)からの抜粋である。これを読んで,下の問い(問1~4)に答えよ。(文章は一部省略したり,書き改めたりしたところもある。) (配点
13)
ここに茶碗が一つあります。 中には熱い湯が一ぱいはいっております。 ただそれだけでは何のおもしろみもなく不思議もないようですが, よく気をつけて見ていると,
だんだんにいろいろの微細なことが目につき, さまざまの疑問が起こってくるはずです。 ただ一ぱいのこの湯でも, 自然の現象を観察し研究することの好きな人には,
なかなかおもしろい見物です。 第一に, 湯の面からは白い湯気が立つています。 これはいうまでもなく, (ア)です。 (中略)
次に, 茶碗のお湯がだんだんに冷えるのは, (a)湯の表面や茶碗の周囲から熱がにげるためだと思つていいのです。 もし表面にちゃんとふたでもしておけば, 冷やされるのはおもにまわりの茶碗にふれた部分だけになります。 そうなると, (b)茶碗に接したところでは湯は冷えて重くなり, 下の方へ流れて底の方へ向かって動きます。 その反対に, 茶碗のまんなかの方では逆に上の方へのぼって,
表面からは外側に向かって流れる, だいたいそういう風な循環が起こります。 (以下略)
出典 : 池内了編「科学と科学者のはなし 寺田寅彦エッセイ集」
問 1 上の文章中の (ア)に入れる語句として最も適当なものを, 次の①~④のうちから一つ選べ。 解答番号 9
① 熱い水蒸気が冷えて,小さなしずくになったのが無数に群がっているので,ちょうど雲や霧と同じようなもの
② 熱い湯から立ちのぼった気体が光を反射したもの
③ 熱いところと冷たいところとの境で光が曲がるために, 光が一様にならずちらちらと目に見える,ちょうどかげろうと同じような もの
④ 小さな塵が群がり粒の大きい塵となったのがちらちらと目に見えたもの
問2 前ページの下線部(a)に関連して, 茶碗の湯が表面から冷える過程として最も適当なものを,次の①~④のうちから一つ選べ。
解答番号 10
① 可視光線の反射
② 紫外線の放射
③ 二酸化炭素の放出
④ 潜熱の放出
問 3 前ページの下線部(b)に関連して, 温度差をおもな原因とする鉛直方向の動きが, 全体の動きを駆動している現象として適当で ないものを, 次の①~④のうちから一つ選べ。 解答番号 11
問4 著者はこの随筆の別の箇所で,茶碗の湯から湯気が渦を巻きながら立ち上る様子について記述している。 このことに関連して, 上向きの流れや渦がもたらす現象や自然災害について述べた文として最も適当なものを, 次の①~④のうちから一つ選べ。
解答番号 12
① オゾンホールは, 渦を伴う上昇気流がオソ'ン層に穴をあけることで発生することが多い。
② 親潮は, 台風の渦による気圧の変化や海水の吹き寄せによって生じる。
③ 火砕流は, 火山噴火に伴う火山灰が成層圏まで達するような強い上向きの流れである。
④ 積乱雲は, 強い上昇気流を伴い激しいにわか雨や雷雨をもたらすことがある。
【第 2 問 解説・解答】
解答番号 9 参照HP「No.22 低気圧の分類」図-2説明文
「湯気」は液体か気体か、その区別が捉えられていれば解答に窮することはないでしょう。(湯気は液体)
②の「気体が光を反射する」ことはなく、気体中は「光は透過」します。
③のかげろう(陽炎)は、太陽や炎で温められて空気に密度差ができ、その結果光が屈折する現象。湯気とは無関係。
④の解答の選択肢を選ぶことはないでしょう。お湯に塵が含まれている?!(笑)→正解 ①
解答番号 10 参照HP「No.22 低気圧の分類」図-2説明文
①の「可視光線の反射」であれば「冷めていく湯飲み茶碗やラーメンのどんぶりなどは可視光線を反射するのですから輝く」こと になります。
②の「紫外線の放射」であれば、人体に有害(目、皮膚)ですから身を隠さなければなりません。
③の「熱が逃げる」時に「二酸化炭素の放出」が放出されたら、温泉や家の中や地球はとんでもないことになっています。
④「お湯の表面」から冷える過程-とあります。赤外線の放射と、気化による潜熱輸送がかんがえられます。→正解 ④
解答番号 11 参照HP「No.16 堆積物と層序」続成作用、「No.19 大気の構造」ハドレー循環、「No.25 海洋」、
「No.31 太陽」太陽の構造
液体や気体の対流について問われていると思えば、②の続成作用は全く無関係-となります。
→正解 ②
解答番号 12 参照HP「No.19 大気の構造」成層圏、「No.10 活火山」雲仙普賢岳火砕流、「No.22 低気圧の分類」
①のオゾンホールの原因は、冷却剤の「フロンガス」といわれていて1980年後半以降製造・輸入の禁止がされています。
②の吹送流は偏西風、貿易風によって形成される海流で親潮は含まれません。
③火砕流は火山噴出物が山体を流れ下る現象で、解答に適しません。→正解 ④
第 3 問 先生と生徒(ソラとヒロ)との次の会話文を読み, 下の問い(問1~3)に答えよ。(配点 10)
先生:太陽系は,(a)宇宙に漂つていたガスや塵などの星間物質から生まれたのだけれど, どのようにしてできたんだろう?
ソラ:星間物質が集まってできた雲の密度の高い部分が重力で収縮して, 原始太陽ができました。 収縮がさらに進み, 中心部の圧力と温度が十分に高くなると ア の核融合反応が始まり,
主系列星の太陽が誕生したのだと思います。
先生:そのようにして生まれた原始太陽の周りにたくさんの微惑星が形成され, それらが衝突・合体して原始地球がっくられたんだ。 その後, 原始地球はどう進化したんだろう?
ヒロ:原始地球が大きく成長するにつれて, (b)地表面の温度が上がり, 岩石がとけて地表面を覆い, イ ができたのだと思います。
問1 上の文章中のア・イに入れる語の組合せとして最も適当なものを,次の①~④のうちから一つ選べ。
解答番号 13
問 2 上の文章中の下線部(a)に関連して, 星間物質について述べた文として最も適当なものを,次の①~④のうちから一つ選べ。
解答番号 14
① 星間空間の塵は, 地球に到達するとオーロラとして観測される。
② 星間空間の塵は,大部分がビッグバン直後に形成された。
③ 星間ガスは, 恒星から放出された物質を含む。
④ 星間ガスは,ヘリウムを含まない。
問 3 前ページの文章中の下線部(b)に関連して, 原始地球の表面温度が上昇したおもな原因は次のa~~dのうちのどれとどれか。 その組合せとして最も適当なものを,下の①~⑥のうちから一つ選べ。
解答番号 15
a 太陽風
b 微惑星の衝突
c 大気の温室(保温)効果
d 地球内部の核融合反応
【第 2 問 解説・解答】
解答番号 13 参照 「HP No.26 惑星」太陽系の起源、「No.31 太陽」2太陽の燃料と年齢、「No.12 プレートテクト ニクス」ホットスポット、プレートの移動速度の求め方
太陽は水素の核融合反応で輝いたので「ア」は水素。ホットスポットはハワイのように「プレートの下に固定された玄武岩マグマを定常的に供給する地点」ですから原始地球の地殻形成とは無関係です。→正解 ②
解答番号 14 参照 「HP No.31 太陽」⑧フレア、「HP No.33 続 恒星の世界」3 恒星の誕生・輪廻
①のオーロラ原因は太陽で、星間塵は無関係。
②の星間塵ビッグバン直後に形成されてはいない。ビッグバン直後は水素>ヘリウムが形成された。
③の星間ガスは, 恒星から放出された物質を含む。→正しい
④の星間ガスは主に水素でヘリウムもわずかに含まれる。
解答番号 15 参照 「HP No.5 地殻熱流量」、「HP No.31 太陽」⑥コロナ
aの「太陽風が地球の表面温度の上昇の原因」というのであれば、現在も地球表面の温度上昇が続いていることになる。
dの地球内部で核融合反応が起こっていたなんて・・・。b・cの組み合わせが正解となります。