No.34 銀河と宇宙





 ウイリアム ハーシェル(William Herschel 1738~ 1822)はドイツ出身のイギリスの天文学者で、1790年口径1.2m、高さ12mの反射望遠鏡を完成させ(図-1)銀河の観測を行いました。

 図-1

 1785年、ハーシェルの発見は「恒星の分布は一様ではない」こと。すなわち、天の川方向では星が多いけれどもそれに直交する方向では少ないこと。天の川方向でも「いて座」の方向では多いがそのほかの所ではでは少ないこと。われわれの暮らす銀河系は「平ら」に恒星が分布した形状であることを初めて示しました(図-2)。

 図-2

 さらにハーシェルは「(星の集団からなる)星雲は銀河系よりも遠いところにある」と述べました。
 しかし、銀河系の研究が進むにはさらに100年以上の時間が必要でした。

 ハーロー・シャプレー(Harlow Shapley 1885~1972)はアメリカの天文学者で、HR図を提案したラッセルの下で研究を行いました。

 彼は球状星団の分布を詳しく調べることから、銀河系の大きさを厚さ1800光年、直径30万光年とし、太陽はその中心ではないことを主張しました(1920年ころ)。
 現在では銀河系は厚さ1000光年、直径10万光年と見積もられており、彼の主張した銀河系の大きさはやや大きかったわけですが、「銀河系のサイズ」の基本を示したとが評価されました。

 

 ハッブル(Edwin Powell Hubble 1889~1953)

 図-3 

 以前「ケフェウス変光星(ケフェイド または セフェイド Cepheid)と周期光度関係」の項で説明しましたが、ハッブルはわれわれの暮らす銀河系の更に遠いところにも銀河(アンドロメダ銀河)が存在することを発見しました。
 ハーシェルの「(星の集団からなる)星雲は銀河系よりも遠いところにある」ことが実証され、宇宙という入れ物のサイズが次第に大きくなっていきました。

 そして彼は銀河を大きく4つに分類し、銀河の形態が進化するとの見解を発表しました(表−1)。(現在ではその見解は誤りであるとされました)

分類 特徴 形態 例となる
星団
恒星の種族
E
楕円銀河
中心部(バルジ)と円盤部の境界が明確ではない




星間物質はほとんどない
アンドロ
メダ銀河
第一世代の種族Ⅱがほとんどと考えられている
SO
レンズ状銀河
レンズ型
中心に明るい中心核がある
おとめ座 同上
S
渦巻き型


SB
棒渦巻き型
渦巻きの腕がある中心は膨らんでいる
中心部に棒状の部分があり先端から渦が巻く
S、SB型が多い
銀河系(Sb)、ちょうこく
しつ座







ろ座
腕の部分に暗黒星雲や散光星雲があり第二世代の恒星からなる
腕を取り巻いて第一世代の恒星が回る




I
不規則型
上の3(4)つのタイプに当てはまらない インディア
ン座、大・小マゼラン雲
種族Ⅰを含む銀河は星間物質を含む。

表-1(表-1の図はNHKサイエンススペシャル 銀河宇宙オデッセイ 5 1990より借用、一部改変しています)

 またハッブルは遠く(銀河までの距離=r)にある銀河ほど後退速度(=V)が大きいという「ハッブルの法則」(1929年)を発表するなど宇宙の解明に大きな貢献を果たしました。(ハッブル定数:H=20km/秒・100万光年V=H・r)

 

 「ハッブルの法則」からは次のようなことも

 V=H・rは、H=V/r=銀河の後退速度/銀河までの距離 となります。
 つまり、ハッブル定数の逆数 1/H=銀河までの距離/銀河の後退速度 となりますから、銀河がその位置まで進んだ距離、「宇宙の膨張に要した時間」=「宇宙の年齢」と考えられます。


 1光年=9.46×1012kmですから 1/H=秒×106×9.46×1012km÷20km=4.73×1017秒、1年=3.15×107秒ですから 
1/H=4.73×1017秒÷3.15×107秒/年=150×109年=150億年-とひとまず計算されます。  

 現在では、ハッブル定数:H=72km/秒・100万光年と訂正されており、「宇宙の膨張に要した時間」=「宇宙の年齢」は138~140億年と見積もられています。


 スライファ―(Vesto Melvin Slipher 1875~1969)は1910年代初頭、銀河のスペクトル分析を研究していてほとんどの銀河のスペクトルが赤方偏移を示していることを報告しました。
 赤方偏移は「銀河が、観測者から後退することによってスペクトルが長波長側にずれる現象」でドップラー効果の一つです。




 オーストリアの物理学者ドップラー(1803~1853)は、「動く貨車の上の音楽隊」から聞こえる演奏の変化として説明しました。

 「貨車の上の音楽隊」が近づくときは音楽の key が次第に高く聞こえ(大きくではなく)、遠ざかるにつれ次第に低く聞こえる現象で、普段はパトカー・消防車・救急車のサイレン音の変化を聞くことでだれでも経験しています。

 この現象は音に限らず光でも起こります(図−4 )。

 図-4

 では観測者が静止していて、光源が後退していくとき(光源の後退方向と視線方向とは一致している場合)、光源の発する光の波長(f)と光源の後退速度(V)の関係はどうなるのでしょうか(ドップラーの公式)。

 ドップラーの公式は、

  ① 観測者が静止していて、光(波)源が後退していく、

  ② 観測者が静止していて、光源が接近する、

  ③ 光源が静止していて、観測者が後退していく、

  ④ 光源が静止していて、光源が接近する-の場合分けがありますが、

  ここでは「宇宙の膨張」の説明という関連で、①のみの説明を行います。

 

図-5

 図−5をご覧ください。Xに恒星があって1秒後にYに後退しました。この恒星は静止しているときは波長λ、f個の波(振動数f)の光を発していますので、C=f・λ の関係が成り立ちます。
 恒星は1秒間にX→Yへ移動しますから、(V+C)=f・λ’-①
 一方、観測者はYに達した恒星の光(速度C、波長λ’)を観測しますから、振動数を
f’とするとC=f’・λ’-②

①、②式からλ’を消去するとf’=C・f÷(V+C)

 この結果から後退する恒星(銀河)の光の振動数は、静止しているときより小さくなること、また、C=f・λから波長が長く(赤っぽく)観測されることが分かります。

 最も近い銀河でも75000光年で、銀河が静止しているか後退しているか簡単には判断はつきません。実際後退していなくて、「元々表面温度が低くて赤っぽくみえるんじゃないの」という場合もありえます。
 
 ではどのようにして後退を証拠をつかむのでしょうか。そこに出てくるのが、前に学習した当HP No.31 太陽 7太陽の元素組成 図28、29の「フラウンホーファー線」です。

      

 図-6


 太陽のスペクトル(左)と比べ、遠方の超銀河団のスペクトル(右)では、フラウンホーファー線がより長波長側(赤い方)へシフトしています。(wikipediaより転載・図形編集をしています。吸収線の元素名は当HPで推定したものです。)(多くの赤方偏移は輝線スペクトルで説明しています。図-6は吸収スペクトルで説明していますが、原理的には同様です) 

 ドップラー効果は、野球のピッチャーの球速やバッターの打球速度の測定、スキージャンプの踏切り速度測定、自動車の速度違反測定に利用されています。

 

 

 2000億個(1000億個という説も)の星の集合からなると言われていますが、すべての方向を見通す(可視光線で)ことができません。もともと星が無いところがあるか、または星間物質があって光を遮っていることもあるからです。
 
 初めて電波望遠鏡(=電波を受けるアンテナ)を宇宙に向けたカール・ジャンスキー(Karl Jansky 1905~1950)で宇宙から電波が届いていることを発見しました。

 図−7

  1930年代初頭、ジャンスキーは通信の妨げになっている雑音(の原因となる電波)を調べるため長さ30m、高さ4mのアンテナ(図−7)を空(宇宙)に向けました。宇宙から電波が届いていることを発見し、その電波(雑音)は雷や太陽からのものではない、「銀河の赤経18h、赤緯-10°」=現在では「銀河系の中心、いて座A westから放射されているもの」と結論しました。

 彼の観測は電波天文学の先駆けであったわけですが、当時、光学的に目に見えないものは研究・発見の成果と見なされない風潮があり、天文学会では取り上げられませんでした。

 その後、グロウト・リバー(Grote Reber 1911~2002)はジャンスキーの電波観測に関心を示し1937年パラボラアンテナを建設、「いて座」、「白鳥座A」(電波銀河)、「カシオペア座」(超新星残骸)などに電波源を発見しました。

 銀河の中心には、銀河円盤に垂直な強い磁場がありそこに宇宙線電子が飛び込むことによって電磁波が発生する−シンクロトロン放射−と考えられました。

(宇宙膨張を発見した エドウィン・ハッブルリーバーは高校の同窓生で、ハッブルに理科を教えたのはリーバーの母親だったとのことです。 )

 

図−8

 太陽系の含まれる銀河系は図―8 に示されるように、渦巻き型(S)になっています。

「ハロー(外包)」:
 宇宙線や磁場の影響を受けて形成された銀河円盤を包み込む直径15光年の球状のガス体(宇宙塵を含む)-。
ハロー内部には銀河円盤を包むように球状星団が球状に分布し、それらは銀河円盤に対して垂直な方向に円運動を行っています。

「バルジ」(bulge):
 銀河円盤の中心で、直径1.5万光年の球状に膨らんだ部分。銀河の腕の部分が銀河の中心にスパイラル状に落ち込み形成されますが、周囲の暗黒星雲によって可視光線で観測することは出来ません。

「中心核」:
 中心の直径1光年の球状の部分にはかつては、106個の恒星(第二種族)が詰まっているともいわれました。現在では、いて座A*(銀河系の中心)にブラックホールがあり、そこへ落ち込む数万度の高温のガスとプラズマの輝く現象が確認されています。中心部分の質量は3×106太陽質量と見込まれています。
 
 中心部には銀河面に垂直に強力な磁力線が貫いており、銀河面の回転に伴い磁力線も「注連縄(しめなわ)」のようにねじれ、この磁力線にガス・電子が巻き付くような運動を行います。この際シンクロトン放射が行われ、多様な波長と強度を持った電磁波が放射されます。1930年代初頭、ジャンスキーが捉えたのはこの電磁波(電波)であったことになります。

 銀河の中心からは、銀河面に垂直に筒状・棒状のジェットガスが上下に吹き出しています。これらは銀河の中心に引き寄せられなかった星を構成する元素と考えられ、ジェットは宇宙空間に拡散し再び星の原料になると考えられています。

「銀河円盤」:
 半径5万光年の第一種族の「恒星が弧状に連なり」(=渦状腕:かじょうわん)、銀河円盤を構成しています。「蚊取り線香」状の銀河円盤を平行に眺めると、「天の川」として観測されます。図―8の渦状腕の側に、水色の矢印で銀河系の運動方向を示しています。渦状腕には第二種族の恒星とともに星間物質が多量に存在し恒星が新たに誕生するとともに、地球から光学的に観測できない暗黒帯を構成しています。

「太陽系の位置」:
 太陽は銀河系の中心から2.5万光年の位置にあり、公転速度250km/秒、2.5億年で1周することになります。ケプラーの第三法則から銀河系の質量を太陽質量として求めることが可能となります。
 銀河円盤の回転については1930年頃オールトが「銀河の微分回転」(銀河の中心付近では速く、遠く離れれば遅く星々が公転している。)を行っていることを示しました。
 1960年代では、高空(高度約12km)を飛行しながら赤外線望遠鏡による観測からアンモニアガス、一酸化炭素・シアン化炭素からなる分子雲から発生する赤外線を捉え、それらが銀河中心付近で回転していることが明らかになりました。(NHKサイエンススペシャル銀河宇宙オデッセイ3  1990年)

 局部銀河群
 銀河は10個ほどグループをなすことがあり、銀河群と呼ばれます。銀河系の近傍には大マゼラン雲(15万光年)、小マゼラン雲(17万光年)があって局部銀河群を構成しています。
 集合する銀河が多くなり、数百~数千個の場合は銀河団とよびます。

 クエーサー(準恒星状天体 Quasi Stellar Object )
 あまりにも遠方にあるので、恒星のように見えていたので準恒星状天体。著しい赤方偏移を示す銀河。ハッブルの法則 V=H・rから求められる距離r はきわめて大きく宇宙の果てにある銀河と考えられています。
 現在まで数十万個発見されており、クエーサーの中心にはブラックホールがありそこに向かってガスが落ち込んでいると考えられています。中心核からは長さ103~105光年もの長さのジェットの噴出が確認されています。

 セイファート銀河
 クエーサーに似た天体で、アメリカの天文学者 C. K.セイファートが 1943年発表。中心核のある渦巻銀河で明瞭に見える中心核から電波、赤外線、紫外線、X線を放射しています。

 


 「1 星の集団 銀河の発見」の項で触れましたが、ハッブルは遠くにある銀河ほど後退速度が大きいという「ハッブルの法則」(1929年)を発表しました。太陽を中心に宇宙が膨張しているのではなく、宇宙全体が膨張しているので、「どこの天体からも同様に、遠くにある銀河ほど後退速度が大きく」観測されます。

 

 

  1965年、アーノ・アラン・ペンジアス(Arno Allan Penzias)とロバート・ウッドロウ・ウィルソン(Robert Woodrow Wilson)は低雑音アンテナを宇宙の全方向に向けました(ホーン型アンテナ 図-9)。
 すると絶対温度にして3°K(詳しくは2.7°K)の電波が宇宙のあらゆる方向から届いていることに気がつきました。他の研究者も同様な観測を行ったところ同じような観測結果を得ました。

 

 図-9

 このような観測結果をどのように解釈すれば良いのでしょう?以前にウイーンの変位則 (HP No.22 低気圧の分類No.31 太陽)を学びました。物体はその温度に応じてその表面から電磁波を放出しており、物体の表面温度(絶対温度(T))ともっとも強く放出される電磁波の波長(λm)の関係は λm・T=C でした。
 
 すなわち絶対温度にしてT=3°Kと極低温の温度ですから、その昔は極めて高かった宇宙の始まりの名残ではなかったのではないか-と考えられました。宇宙は超高温・高圧のビッグバンに始まったと考えられ、その直後は素粒子が作られ、水素は電離していたものが、やがては温度が下がり水素やヘリウム原子が形成され(10~40万年後、温度にして3000~4000°K)、宇宙空間は膨張してさらに温度が低下して行き、3°Kの電波を観測したというものです。

 3°Kの背景放射の発見はビッグバン理論を支持する証拠で、ペンジアスとウィルソンはこの発見によって1978年にノーベル物理学賞を受賞しました。